2016年6月のBrexit以降、米国長期金利は上昇を続けており、その要因としては(一回利上げをはさんだものの)大半は期待インフレ率の上昇である。従って米金利の上昇による株価の圧迫懸念は杞憂に終わった。市場参加者の期待インフレ率を表わす主な指標は10年ブレークイーブンであり、10年固定利付国債金利から10年物価連動国債金利を引いたレートである。

10 year breakeven.png

上が米10年金利、下が米10年ブレークイーブン。これらを引き算した実質金利は2016年初頭の65bp程度から45bp程度まで低下している。

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 (1)で見てきたように、米金利の上昇はただちに株価の下落につながるわけではない。しかし、10年ブレークイーブンは足元のPCEデフレーターと共に米国中央銀行であるFRBの関係者が注目している指標であり、これらがインフレターゲットである2%を上回っている現状では継続的な利上げが予想される。ブレークイーブンが1.5%から2%に上昇している間、すなわちBrexitから現在に至るまでは、政策金利の引き締め方向への変更の心配もなく、期待インフレ率の回復だけを元にした債券から株へのグレートローテーションで米国株はほぼ一直線に上昇したが、今後は堅調さを保つと思われるものの、このような理想的な上昇はあまり期待できないだろう。


USgg10 JPY.png

オレンジが米10年金利、青がドル円。

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 株式の次は為替。先進国の間では為替レートは金利差に大きく左右される。一般的に高金利の国に投資した方がリターンが高いため、高金利の国には海外資金が集まりやすく為替レートは上昇しやすい。実際、米金利単体でも米ドルの変動の5割を説明できる。図のように、ドル円と米10年金利はそれなりに良い相関を示す。2014年末から2015年前半にかけて米金利が低下した局面でもドル円が上昇していたのは、円金利が黒田バズーカの第二弾で下に押し込まれたためであり、金利差とは矛盾しない。

 米国よりも日本の方が構造的にインフレになりにくく、インフレに差し掛かった局面では日本の方が金融政策が緩和的であり続けるはずなので、日米金利差はしばらく拡大を続ける可能性が高い。米国のトランプ政権からドル高牽制発言が出ることは十分に予想されるが、それによってドル円が一時的に下落することはあっても、金利差に逆らったドル安円高は継続し得ない。リーマンショック後に日米金利差が低下していた時代、白川日銀が実弾介入を行ってもドル高円安を作れなかったのを鏡に映したようなものである。注意すべきは、トランプ大統領の圧力によって日銀がテーパリングに追い込まれるリスクである。一応、為替操縦というのはスポット市場への実弾介入のことであり、金利操作をツールとした為替安操作は当たらないということにはなっているが。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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