この週末、安倍首相は対米第2位の貿易黒字国を代表して日米首脳会談に赴く。それに先立ちドル円は極めて重い展開が続いてきた。

一連の騒ぎを振り返ってみると、トランプ大統領は一貫して通商政策について熱い思い入れを持っていたものの、「ドルは高すぎる」と言い出してドル安トレンドが始まったのは1/27であり、それまではひたすら関税の話をしてきた。その次に日中のマネーサプライを攻撃して日本国債小暴落のきっかけを作ったは1/31である。関税の歴史は400年以上あるが、為替安誘導が輸出促進手段として定着したのはプラザ合意以降であり、その手段として協調介入ではなく金融政策が用いられるようになったのは21世紀に入ってからである。大統領の発言履歴は実にこの人類の歴史に沿ったものであり、これまで知識が1980年代に止まっているのが、1月末になってようやく「問題は為替だったか」「為替を動かしているのは金融政策だったか」と勉強してきているのではないかと思える。なお、中国に関しては為替安誘導どころか自国通貨の買支えに必死であるため、そもそも何を指して批判しているのかすら判然としない。過去に金儲けに成功したからと言って、一言一言に全て何らかの根拠と理論が裏付けられていると考えるのは買いかぶりである。
 米国の圧力で円高、というトラウマはクリントン元大統領時代に生まれたものだが、クリントン元大統領が日本に厳しくあたったのは、冷戦が終わって1990年代にアメリカ一強になり、同盟国が用済みになったためである。日本を味方にして中国に対抗せねばならない立場にあるトランプ大統領が同じことをする理由はない。一回マネーサプライを口走ったから言って日本国債が崩れたのも(日銀の輪番スキップのせいでもあるが)過剰反応であろう。常識的に考えて、自分が難民問題などで全世界から批判を浴びている時でも忠実に尻尾を振り続けてきた唯一の国家元首に対して、「円が安すぎるから高くしろ」と言うだろうか。アベノミクスは安倍首相の最大の政治的資本であり、これをつぶしたら貴重な親米安定政権の存続にかかわる。さらに、「金融緩和の結果ならマネタリーベースを減らせ」というやり取りをするトランプ大統領の姿もかなり想像しづらい。日本の金融緩和は脱デフレのためのものであるという説明で十分煙に巻けるだろう。砲撃に備えて対策を考えるのは官邸として重要かもしれないが、一個人投資家としてそちらに全力で張る理由はない。

 もちろん、これは日銀が異次元金融緩和が円安を目的としたものではない、あるいは為替操縦ではないと主張しているわけではない。異次元金融緩和が経済に影響を及ぼしたほぼ唯一の経路が円安であり、これがもし円安誘導でなかったらそもそも日本株も上がらなかっただろう。しかし、面に向かって言ったら怒られるだろうが、金融緩和で為替安誘導を行ってきたのは米国も同様である。筆者は基本的に日米首脳会談の結果円高に走るリスクは小さいと考えており、米株並びに日本株への強気スタンスを維持する。次の円高局面があるとしたら、むしろ素直に米国の金利低下が原因となる可能性の方が高い。






この記事は投資行動を推奨するものではありません。




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  1. 1. 2017/2/13 短期ビュー

    • [金利とセンチメントから資産価値を考えるブログ]
    • February 13, 2017 00:18
    • […] 日米首脳会談は9日の記事の予想通り、トランプ大統領は日本に無理難題を突きつけることもなく友好的な雰囲気で終わった。ギャンブルを張れない、説明責任を負う資金は月曜から投資を再開できるだろう。一方、麻生・ペンス両氏が合意した内容のうち、ややモヤっとしたものが残るのは (1)財政政策、金融政策などマクロ経済政策の連携 である。財政は連携して日本が公共工事なり減税なりしてくれたら日本株にも景気にもポジティブである(既に人手不足であることを考えると公共工事はあまりありがたくない)。金融政策の連携とは何か。米国が利上げを続ける中で異次元緩和を続けるのは連携と言えるのか。とりあえず財政、金融の連携はともに円金利の上昇要因ではある。一回話題にされた後であり、しかも日銀が指値オペ以降連日の買入れオペで相当の量の国債を吸い上げているため、大きく上昇するイメージもつきにくいが。 ドル円は、金曜に上に走りすぎた分をセルザファクトで押し戻されており、日足で上ヒゲ陰線となってしまっている。米金利がパッとしないということもあり、ヒゲの先端である113.85を再び上にブレイクするまでロングは待ちたい。もっとも週足が下ヒゲ陰線となっているため、111.58はサポートとなる。一方、日本株が下がる理由はあまりない。TOPIXは金曜の日足下ヒゲ陽線の安値1533、週足の下ヒゲ陽線の安値1509がそれぞれサポートとなる。1550-60という、年初来3回跳ね返された抵抗ゾーンを上に抜けられるかに注目。上の方で抜けた、いや騙しだ、と神経質にならないためにも、このあたりからサポートを背に握っておきたい。 […]