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 前回の記事で不動産企業が政府による金融引締めと不動産購入制限を前に土地を素早く仕上げて手放そうとしているという観測を紹介した。素早く回転しろと言っても売れないものは売れないので、需要が追いつかず高回転に失敗すると当然またディザスターになる。上手くいくかは結局エンドの需要次第である。

 肝心の消費者はというと、売り切りの更に後の供給不足を見越してか、または政府の規制が始まって買えなくなる恐怖からか、規制が既に始まっていることを考慮すると猛烈な勢いで住宅を買い集めている。不動産企業の住宅在庫は絶対面積(上図)で見ても販売月数ベース(下図)でも2014年のチャイナショック前をピークに低下に転じ、2016,17,18年と急速に掃けて来ている。足元ではもし今のペースで売れ続けながら新規住宅供給が止まれば中国全土の不動産企業の住宅在庫は10ヶ月で売り切れてしまう計算になる。 
FT home sales
China 70 cities
 中国の70都市新築住宅価格は2017年の高い発射台からも安定的に伸びている。販売面積の成長は規制から細りつつあるが、金額にすると10%台の増加に加速している。トップ100不動産企業の1〜5月の販売額は前年比+33.5%と更に高い。名門ではカントリーガーデンは+37%、かつてドル建て債務で首が回らなくなっていると言われながら2017年に7000億円の大型ドル債起債を被せてきてアジア市場を震撼させたエバーグランデ(Ever Grande, 恒大集団)は+39%となる。政府が既に住宅ローンを引き締めつつある中で、消費者のファンディングがどこから来ているのかは不明である。一応過去に記事を書いたこともあるが、もしかしたらシンプルに所得が追いついて来てキャッシュを貯めた人が増えて来たのかもしれない。

  このまま不動産企業の在庫が掃けると、2014年から世界経済を脅かして来た中国の不動産バブル問題は見事にソフトランディングを果たしたことになる。そして「在庫が減って来たのを見て」政府が再び購入規制を外した場合、その時に備えてお金を貯めていた消費者はバランスシートを小さくしてしまった不動産企業と面合わせになる。余計なマイクロコントロールでデフレ期待を作ると供給力が削がれるのでインフレ要因になる。中国不動産周りの景気は短期的には高回転で過熱、中期的には土地取得減速からの建設減速、そして長期的には健全化がポジティブ要因となるか。住宅在庫の大半が消費者の手に移った後は、政府としては供給を増やそうすることはあっても資産価値を下げに行こうとは考えないはずなのでもう安泰か、或いはそれがまた住宅ローンを抱えた消費者の慢心となるか。中国の不動産需給そのものは世界一わかりにくいが、いずれにしても遠い未来の話である。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。