Fitch-CHina
 2017年は引き締めで話題になった中国当局だが、貿易戦争への備えのためか、中国人民銀行が6/24に今年に入って3回目の預金準備率下げを敢行した。これにより7/5から7000億人民元の流動性が市中に放出される。
China Reverse Repo rate
 政策金利の一つに当たるリバースレポ金利では2018年初旬はFedの利上げに対抗する形で追随利上げが行われてきたが、6月利上げに対しては対抗利上げを放棄した。

 また、中国人民銀行のQ2金融政策委員会の声明文では、

"China’s central bank said on Thursday it will maintain a prudent, neutral monetary policy, neither too tight nor too loose, and keep liquidity reasonably ample."

としている。2月の時点では

"China’s central bank pledged on Tuesday to maintain a prudent and neutral monetary policy this year and keep liquidity reasonably stable."

であった。目指すべき流動性がStableがAmpleに変わっており、ややトーンのハト転が見られる。
China 1 year
China 10 year
 金融スタンスの変更を受けて中国国債は1年も10年も低下している。10年金利は年初来50bp程度低下している。
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 米中の10年金利差はここ数年の安値まで低下している。シンプルに米中金利差と連動すると考えると人民元も2016年安値の近くに居てもおかしくない。前回の記事でも人民元の下落は金利差通りと記したが、金利差対比ではむしろ人民元はまだ底堅い方だ。

 2014年の金融緩和は上海株バブルを醸成したが、今回は投資家も学習しているし、4年前と比べて滬港通(Shanghai-Hong Kong Stock Connect)で割高な上海株と割安な香港H株の間の裁定が効くようになったため、上海株は再びバブルを起こす代わりに、穴が空いた風船のようになっている。一方チャイナショックでは唐突な通貨安がキャピタルフライト警戒に繋がったが、海外からネット資金流入となっている今はその心配はないはずだ。貿易戦争は仕方ないとしても、シンプルな金融緩和&通貨安の組み合わせから中国株について心配する理由はあまりない。

 一方フィッチは「最近の預金準備率の引き下げにより確保される追加の流動性よりも、規制強化の方が信用の伸びに大きな影響を与える」としている。確かに最初の図の緑線で表されるクレジットの伸び(Credit Growth、社会融資総量から株と地方債を除いたもの)は落ち込みが止まらない。この「量的緩和、質的引締め」とも言える、相反するポリシーミックスは何を意味するだろうか。確かにチャイナショック前から、いかに製造業のファンディングを支援しつつ、不動産市場を引き締めるのは中国当局にとって長年の課題だった。また地方政府の債務依存のデレバレッジへのこだわりもまだ強い。そのため金融政策はどんどん複雑に、マイクロコントロールになっている。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。