前回記事の「中国社債市場の産みの苦しみ」では中国の社債市場の格差拡大を取り上げたが、ここではより詳細なデータを展開していく。中国の半外資系投資銀行である中金公司(CICC)のリサーチ部門のレポートより。
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 左図は2018年年初からの格付けごとのクレジットスプレッドの動き幅。超AAA(なんだそれは。AAAがザルすぎたか)とAAAの社債はやや買われ(クレジットスプレッドが縮小)、代わりにAA+とAAの社債は大きく売られた(クレジットスプレッドが拡大)。クレジットの質による選別が激しく進んでいることを表している。右図は1年と5年のAAA -AA社債のスプレッドを表し、こちらからもAAAとAAの格差が年初から大きく拡大しているのがわかる。ここまでは前回取り上げた通りだ。

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 一方、ベース金利が大きく低下したことから、ベース金利とクレジットスプレッドを足し合わせたトータル利回りはと言うと、上図が4月以降、下図が6月中旬以降の利回り変化である。安全資産である政策銀行債(政府系金融機関である国家開発銀行など)と超AAA、AAA社債の利回りはベース金利の低下と共に大きく低下した。AA社債は限定的な上昇。これが何を意味するかというと、確かにクレジットは引き締まっているが、一気に緩和に舵を切った金融政策のおかげで、たとえクレジットが悪化した後のAA社債でも再融資コストの上昇は止まっている。
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 金利水準の次に量である。社債による企業のネット資金調達はチャイナショックの対処で金融緩和が続いた16年は全セクターで増加。金融引締めと高金利だった17年はほぼ前年並み。金融環境が緩和的に傾いた18年1-6月は再び増加に転じたが、その大半はAAAが占め、AA以下の企業の資金調達は絞られた。
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 デフォルトの急増と社会融資総量の減少がセットで話題になったが、改めて内訳の中の社債セクターを眺めるとそうでもない。上図と概ね整合的だ。ただ、その社債の増えた内訳のほとんどをAAA格の超大企業が独占しているので、我々が気にしている格付けの低い民間企業に限ると「2017年とほぼ変わらない」というのが正解だろう。

 まとめると、2018年の中国の低格付け企業の社債による資金調達は「金利水準も量も2017年並みからやや悪化」というところで、我々が危惧しているように劇的に引き締まったわけではない。ただ企業間の格差は広がっている。現政権が成立してからサプライサイド改革で中小企業の供給力が矢面に立たされ、次に資金調達でも大企業総取りとなっている。格差や全体の資金状態の悪化が続くようであれば、低格付け企業のスプレッド拡大幅以上に金利を引き下げていかないと、いずれ利回りベースでも調達金利が悪化スパイラルに入る可能性がある。また、金利を下げていくにつれて人民元相場も対米ドルで下落が続く可能性もあるだろう。ただ今のところ、金融緩和の大波は全てを覆い尽くしている。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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