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    一片の曇りもないように見える米国ファンダメンタルズの中で話題になっているのが金利カーブのフラットニングである。先月には20bpを割り込んで日本国債を追い越した。教科書には「イールドカーブのインバート(短期金利>長期金利、長短金利逆転)はリセッションの前兆である」と書いてあり、Fedの中でもイールドカーブのフラットさを懸念する声が出てきている

 確かに上の図でもわかるように、1970年代からリセッション(グレー)の前には必ずイールドカーブのインバートが見られたし、イールドカーブのインバートの後には必ずリセッションが続いた

インバートがリセッションを招くカラクリ

 このカラクリはなんだろうか。カーブのインバートそのものが経済に何らかの呪いをかける訳ではない。フラットニングで勝てるポジション(短期債を保有せず、代わりに同じ利回りしか得られないが金利リスクが5倍10倍もある長期債を保有)は金利リスクあたりの利回りが低い。にもかかわらずカーブがフラットニングするのは、長期債の買い手が今の政策金利が持続不可能なほど高すぎであると確信しており、超過利回りを要求しないまま積極的に長期の金利リスクを取ろうとするからだ。そして今まで、長期債投資家は正確にリセッションを予想してきた。逆に言うとFedはこれまで毎回債券投資家から見て持続不可能と思われる水準まで政策金利を引き上げ、景気をクラッシュさせてきたわけだ。景気クラッシュによってしかインフレを止められないのだから当たり前と言えば当たり前だが

インバート後のスケジュール

 上図の下段は米国の政策金利。利上げの結果としてのインバートからしばらく(数ヶ月)経ってから利下げが始まり、インバートが解消する。そしてインバートが始まって1〜2年後にリセッションが始まっている。
Yield curve and Dow
 長短金利差とダウのチャートフラットニングを経て政策金利が引き下げられて再びスティープニングに転じてから初めて株が下落局面に入っている。従ってまだインバートも始まらないうちに株のクラッシュを心配する必要はなさそうだ。リセッションの予定が決まっている中で過去を学習した参加者が先回りするにしても、少なくともあと1年程度は余裕があるだろう。

今回は違う?

2018-20-1
 イエレン前FRB議長は足元のイールドカーブのフラットさを特殊なものと位置付けている。QEによりタームプレミアムがこれまでにないほど圧縮されている(大雑把に言えば長期金利がQEによって低く押えられている)という構造的な特徴により、金利カーブは(過去のリセッションを招いたような苛烈な引締めではなく)少しの引締めでも簡単にインバートしやすくなったとしている。一方、サンフランシスコ連銀の調査アドバイザー達は「たとえインバートがタームプレミアムによるものであったとしても、それは「今回は違う」を意味するわけではない」と反論する。代わりにサンフランシスコ連銀の論文は、リセッションを予想するのに2年-10年スプレッドよりも3ヶ月-10年スプレッドの方が有用であり、後者(足元で75bp程度)はインバートまでまだ距離があるとするが、チャートを見ても筆者には違いがよくわからない。

 たとえQEによってタームプレミアムが圧縮されていたとしても、Fedは日銀のように長期金利をコントロールしているわけではないため、Fed以外の参加者がプレミアムが足りないと感じて参加しなければ長期金利はやはり極端に低く圧縮されることはない。イエレン氏の言い分が正しいケースとしては、Fedと他にもう一人リジッドな需要が市場に居る場合が挙げられるだろう。9/15まで続くと言われている年金基金のファンディング・レシオ復元の動きがそれに当たるだろうか。もし年金基金の買いが居なくなっても結局インバートしたら1〜2年後の景気後退に備えるべきかと思われる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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