smart money
 スマートマネーというのがVIXショック以降の米株のラリーを冷ややかな目で見ているらしい。ダウ平均はVIXショックの下げを全て取り戻しているが、スマートマネーフロー指数はその間断崖のような下落を見せており、スマートなマネーはこの非合理的なラリーを無視しているというのだ。スマートマネーとは何か。

スマートマネーとは

 スマートマネーフローインデックス(Smart Money Flow Index, SMFI)とは、ダウ平均の寄付きからの30分間と引けまでの30分間の値動きの差である。Bloombergの説明によると、寄付きからの30分の値動きは良い悪いニュースに動かされた、感情的な大衆の欲深い買いと恐怖に突き動かされた売りに動かされているそうだ。ショートカバーも朝一に出ることが多い。一方スマートマネーは本気玉の執行を引け近辺まで待つ。彼らはその前に空売りを入れて市場の反応を試したり、手に入れられる可能な限りの情報を駆使し、他の全ての市場参加者に対して優位に立つ。要するに引け近辺の値動きが正しく先行きを予想し、寄付き近辺の値動きは間違っている、というのを哲学にしているわけだ。

    上のような月額から、この指数は前日の引け値から当日の10時(寄付きの30分後)の価格を引き、当日の引け値を足す。前日引けから当日10時までの間に株が上がれば上がるほど、この指数はダウ指数をアンダーパフォームする。ダウが高値を更新してもスマートマネーが付いていかないなら、先行きは怪しいとされている。

スマートマネー指数は一貫してダウより冷めている

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 ところが冒頭の図は綺麗に「連動→乖離」の構図になるように切り取られているが、もう少しスパンを広げてみたらどうだろう。ここに2008年8月からのダウ平均と、ダウ平均とスマートマネー指数の差を掲載する。ダウがずっと右上がりで推移して来たのに対し、スマートマネー指数は一貫してアンダーパフォームし続けた。つまりスマートマネー指数のアンダーパフォームは特に暴落を予想して来なかったわけだ。逆にダウが下落する場面でもスマートマネー指数は付いていかずややアウトパフォームしている。シンプルに、米株は寄付き30分で勝負が決まってしまい、残りの時間は消化試合であったことをこのチャートは示唆している。確かに我々の記憶を辿っても米株は寄付きから上げ、その後は横ばいということが多い。引けにかけて急騰することはあまりない。

スマートマネーはスマートなのか

 とすると、スマートマネーとは何か、本当にそんな勢力がいるのかという議論になる。もし引け近辺でしか取引しない特定なスマートな人達がいたとしても、彼らは市場参加者の平均よりも株を買っていないので、リーマンショック後、コンスタントにダウの上げを取り損なって来ただけだ。それは本当にスマートと言えるのか。もし寄付きを無視するような特定のファンドであったならアンダーパフォームしすぎてとっくに投資家からクビ(全額解約)を言い渡されているはずだ。

 引け近辺で取引する市場参加者としてすぐに思いつくのはインデックスにトラックさせようとする投資家達である。インデックス価格は引け値を基準にして決められるので、トラッキングエラーを最小化させたいなら引け近辺で取引した方が良い。彼らは他の市場参加者よりスマートなのかというと、明らかに給料も低く、マーケットを見て先を見通したくなるようなインセンティブを与えられていない。自分の頭で考えたらインデックスに負けると思っているからインデックス通りに売買しようとしているではないか。とすると、彼らの相場観を拝借しても無駄である。いずれにしても、直近のスマートマネー指数がダウ平均より大幅に低いからと言って、ダウの今の上昇トレンドが非合理的なものであると断言するのは飛躍しすぎているように見える。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。