TaylorRule1
 トランプ大統領は常に米株が上がるのを自身の功績として吹聴してきた。貿易戦争で世界金融市場をかき回した時も、中国株が下がって米株が下がらなかったことをもって正当化してきた。それがいよいよ米株もクラッシュすると、淡々と利上げを続けてきたFedに攻撃の矛先を向け、10/10以降立て続けにFEDは「間違いを犯している」「狂っている」「FRBは制御不能」「米株急落はFRBの引締めによって引き起こされた」と批判しいる。まるで株が上がるのはトランプのおかげ、株が下がるのはFedのせいと言わんばかりだが、実態はむしろ逆に近いのではないかと思う。

テイラールールとの比較

 今の政策金利は物価やGDPから機械的に政策金利を決定した場合の算式であるテイラールールに照らし合わせるとまだまだ低い。政策金利がテイラールール通りになる≒実質短期金利が均衡実質金利を逆転≒長短金利が逆転、とリセッションに繋がることも多かったが、現状はテイラールールが示唆する政策金利よりまだ2%も低い。これは「現在の実質短期金利が潜在成長率よりだいぶ低い」とも同じ次元の話である。FRB総裁を選ぶ際にトランプ大統領はそのテイラールールを作った、(従ってパウエル総裁よりもタカ派と思われる)テイラー教授をも面接したはずだが、その時は単に共和党の一部でテイラールールファンがいると聞いたからなのか、テイラールールを知らなかったのか、それとも政策金利を知らなかったのだろうか。

中銀の独立性

 いや、そもそも大統領に対して「今の政策金利は高くない」と言い訳する筋合いすら、本来Fedにはない。Fedに限らず、大半の先進国の中央銀行は政府から独立している。その理由として我々は教科書で「選挙を意識する政府は放漫財政・緩和的な金融政策を取りがちだから」と学んでいる。人気取りのために景気が良い時にあえて減税して、金利が上昇すると人気取りのために中央銀行を非難するのは教科書に書かれている100年前の反面教師から進歩していない。政府に隷属する中央銀行が発行する紙幣は市民に信用されないことが多く、しばしば濫発によって紙くずになった。トルコのエルドアン大統領が通貨暴落・インフレに対応するために利上げしようとするトルコ中銀を攻撃した時に我々がトルコを嘲笑っていたのを思い出したい。今のトランプを見てなおトルコを笑えるだろうか。案の定、世界中から(利上げによって苦労する新興国を含めて)Fed擁護の声が殺到し、トランプは南アフリカ中銀総裁から「当局は、絶え間ない政治の干渉などを受けることなく、独立して行動する自由を与えられる必要がある」と説教される有様であった。

債券市場のスルー力

US 2 year yield
 近い将来のFedの金融政策を予想しながら取引される米2年国債の金利はトランプの批判に全く動じていない。米株の大規模な急落とトランプの批判の双方を合わせても5bp程度の値動きしか作れなかった。米国国債市場はFedの独立性に十分な信頼を置いているようだ。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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