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 国際社会が金満国家サウジアラビアで皇太子ビン・サルマンが主導する政治改革を称賛する中、本ブログは「サウジアラビアの迷走が続く」「中東国家の改革の歴史を考える」とずっと冷ややかであった。アルワリード王子を監禁したりして怖いとか、なんとなくあいつは信用にならんとか、なんとなく迷走感が漂い安心感がない、という程度であったが、サウジアラムコの上場失敗に続き、いよいよ派手にやらかしてくれたようである。
 10/2にサウジアラビアの反体制派(リベラル)ジャーナリストの一人、ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア領事館に入ったきり失踪してしまったのである。結婚のための書類を取得するためで、婚約者を領事館の外に残したままであったそうだ。日頃の行いから直ちにサウジアラビアによる拉致や殺害の噂が立ったが、サウジアラビア当局は否定し続けており、カショギ記者はすぐに立ち去ったと言い張っている。

 普通わざわざ海外の大使館で殺人を行おうとは思わない。外交特権があるとはいえ、外国の目と鼻先にいるから騒ぎになりやすい。案の定トルコにはカショギ記者が領事館に入ったきり出てこない監視カメラの映像を公開されてしまった。カショギ氏が拷問を受けて殺害された様子がApple Watchを通して外に流されていたとも言われる。相手が世界最強のトランプ大統領に嫌われているトルコであり、一方自分達サウジアラビアはトランプの大得意先であるから油断していたのだろうか。これがロシアが自国のジャーナリストを海外で暗殺したら経済制裁やら何やらで大騒ぎになるのに、と考えていたが、親米国家でも一応大騒ぎになるらしい。トランプ大統領が本日、「もしカショギ記者が領事館内で殺害されたならサウジアラビアを厳しく罰する」と発言したことからサウジアラビアの株式指数は一時7%も急落した(イスラム圏なので日曜も取引が行われる)。

 ビン・サルマンと聞いてまず連想するのが10兆円も出資してもらったソフトバンクのビジョン・ファンドである。サウジアラビアが万が一経済制裁でも受けたら財政運営のためにお金を引き出しに来るだろうか。またそれとは別にサウジアラビアの政府系ファンドは日本株に広く投資している。株全体のリスク要因の一つとして注意する必要があると思われる。

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サウジアラビアの迷走が続く
中東国家の改革の歴史を考える

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