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 今夜から明日のアジア時間にかけて米国の中間選挙が行われる。中間選挙は2年に1回で、今回下院の435全議席と上院の100議席中35議席を改選する。現時点では与党共和党は下院の235議席と上院の51議席を押さえている。考えられる可能性は上院下院の過半数を抑えるのが「共和・共和」「共和・民主」「民主・民主」の三通りだそうだ。下院では40人の共和党議員が引退・転出を表明しており、これは民主の倍に当たるので、下院の方が奪還しやすくなっている。

 そうは言っても60人減らした後でもまだ共和党が優勢ではないかと言いたくなるところだが、一般的に中間選挙では与党が不利とされている。これは第二次世界大戦後続いてきた現象であり、それまでの大統領の仕事振りにそこまで関係がない。一説によると大統領選で勝利した政党の支持者はそれで満足し、中間選挙では投票しない傾向があるからだそうだ。「中間選挙まで2カ月の時点でのトランプの支持率は40%だが、同じ時期の支持率が50%を下回った歴代の大統領は、下院の議席を平均37減らしている。支持率が50%を超えていた大統領が失ったのは、平均14議席だ」そうだ。従って民主党の下院過半数奪還はある程度織り込まれている。
 
 大勢が判明するのは下院が東部時間23時(日本時間13時)以降。上院は西部のいくつかの州が鍵を握るので0時(日本時間14時)を回る可能性がある。接戦となった場合は数日間の再集計になるかもしれない。2016年のBrexit、米国大統領選、2018年のイタリア総選挙に続いてまたしても海外政治に疎いアジア時間がファーストリアクションを迫られることになった。

 さて肝心な市場の反応だが、よく言われているのは、メインシナリオの「民主・共和」ならイベント通過で緩やかなリスクオン、リスクシナリオの「民主・民主」ならねじれ国会懸念でリスクオフ、ベストシナリオの「共和・共和」なら財政拡大でリスクオン、というものである。ねじれ国会なら財政拡大などの法案を通しにくくなる。下院からの大統領弾劾発議も可能となるがどうせ上院に阻まれるので資産価格へのインパクトは限定的と思われる。議会が完全に民主優勢になった場合は議会と大統領拒否権の戦いが2年間続く。しかしこれは一般論であり、それも印象論に近く、冒頭の図が示すように過去の反応は玉虫色である(野党・野党はさすがに少し不利か)。

 事前のチャートやテクニカルがどのようなサインを示していようと、それは選挙のような「市場参加者以外の人がコントロールする事象」の帰趨をを予想するものではない
。リアクションはあくまでも結果が出た後にするものだ。アジア時間の投資家は↑のシナリオを頭に叩き込んでいるかもしれないが、きちんと判断を下せるのはあくまでも米国時間である

 一方、市場のポジショニングや織り込み具合としては、株の投資家は中間選挙のプレポジションどころではないと思われる。10月の急落は別に民主の逆転を織り込むものではなかったはずだ。従って予想通りの民主・共和でリスクオンというのはやや怪しいように思える。民主・民主シナリオについては、一部で「ブルーウェーブ」とは言われるものの、結局人材不足でオバマ元大統領が仕切っているところを見ると期待薄と思われる。もしこちらが実現したら株を下でぶん投げるべきかどうかは悩みどころになるが、下院民主の時点でアップサイドはあまりなくなるので先に下院の大勢が決した時点でリスクを落とすのも手かもしれない。

 共和・共和の可能性は民主・民主よりやや可能性が高いと思える。ちょうど良いタイミングでの難民キャラバンという茶番はトランプ優勢に作用するだろう。しかし、こちらもポジショニングから考えると更なる財政拡大連想→株の上値を買い上げる、という余力が市場に残っているかどうか怪しい。少なくとも貿易戦争停戦ほどのグッドニュースではない。むしろアジア時間に下院共和と来て株の上値があれば、中期的には日本時間引けあたりがしこっていたロングの外しどころになるのではないか。米金利とドル円はもう少し素直に動きそうに見えるが、いずれにしても米国時間の反応を見る前に順張りフルベットは危険が高いだろう。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。