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 トランプ大統領に批判的なNY Timesが「トランプとペンス副大統領の不仲説」を記事に書いているが、案の定二人からフェイクニュースとして一蹴されている。それはともかく、中国への要求や不平不満について、トランプとペンスがそれぞれ重視するトピックが段々分かれてきているように見える。

 トランプは相変わらず通商問題で関税を武器に中国への譲歩を迫ることに情熱を注いでおり、中国からの妥協案が満足のいくものであれば追加関税を見送る可能性もちらつかせている。一方ペンスは10月4日の演説から一貫して、南シナ海や周辺国の「借金漬け」など拡張主義、人権状況への批判をパプアニューギニアAPECでも続けている。これを日経の記事は「役割分担」ザ・ナショナルは「良い警察官と悪い警察官」と表現しているが、要するに互いに違う分野を重視しているわけだ。トランプは明らかに他国の人権問題に大した興味を持っていないように見える。ペンスは貿易赤字に触れなかったわけではないにしろ、それはあくまでも非難すべき技術移転強要の結果であり、奪われた雇用を中国から取り戻そうという話をしていない。二人とも興味を持っているのは知的財産保護(技術移転強要の撤廃)くらいではないだろうか。

 戦術的な使い分けなら良いが、個人的にはこれがナチュラルに二人の興味の分岐を表しているという可能性も考えてみたい。ペンスは講演で「ソ連が崩壊した後、我々は中国が必ず自由な国家になると信じ、その楽観さに基づいて21世紀の始まりと共に米国は中国をWTOに加盟させ、経済の門戸を開いた。かつての政権がこの決定を下したのは経済的自由が政治的自由に繋がり、中国が私有財産、個人の自由、信仰の自由といった人権を尊重するように変化するとの期待に基づいたものだった」と無理やり整合させているが、実際この30年間、米国の中国に対する態度は矛盾を満ちたものだった。イデオロギー的には相手は実に気持ち悪い、いつでも転覆したいと思うような吐き気がする権威主義政治体制だ。また天安門事件以降、相手の方も米国が広めようとする民主主義・普遍的価値を本能的に敵視しているようで、脅威を感じないわけがない。一方でクリントン、ブッシュの両大統領は中国に金儲けの機会も見出してはリベラルイデオロギーを裏切って親中的な「ディール」をまとめてきた。オバマ大統領はどちらかというと中国を警戒する側だったように見える。

 この矛盾は今でも消えたわけではない。トランプは足元の貿易赤字と雇用のためにディールをまとめようとしている側で、一方ペンス及び議会、シンクタンク側は更に広い意味での強硬で戦略的な封じ込めを主張しているように見える。月末にトランプが中国政府から何らかの譲歩を引き出してディールに満足したとして、ペンスの方の戦争は終わらない可能性がある。一方、貿易に止まらない中国封じ込めを本気でやりたい人にとっては、トランプが勝手に貿易戦争を龍頭蛇尾に終わらせてしまったら困るし、同盟国との間に亀裂を作りまくるトランプの行動は有害である。戦術的な使い分けに見えて、米国の行動は実は迷走しているだけにも見える。その分中国側からしても対応しづらいだろう。ペンスの講演は意図してか否か、明らかに中国側が譲歩しづらい雰囲気を作っている。

 いずれにしても、FANGバブルが破裂した米株を救えるネタはもはや貿易戦争停戦しかない。貿易戦争を進めても米国だけは勝ち組として絶好景気株高を享受し続ける、というわけにいかないのは足元の市場が示している。ここはトランプに全て任せてほしいものである。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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