EUR JPY
 図は2002年から2019年までのEUR/USDとUSD/JPYの長期チャートである。過去はそうでもなかったが、近年になって(特にFedが利上げを開始して以降)両者は鏡像のようになりつつある。もちろんどちらも対ドルのチャートなのである程度反対の値動きになるのは仕方がないが、たとえアベノミクス相場でも多少の時間差を許容すると対円対ユーロのドル高に見えてくる。リーマンショック前はユーロも一つの「円キャリー投資先」だったのに対して、ECBのマイナス金利政策と量的緩和のおかげでユーロも円と並ぶファンディング通貨(キャリー取引の出所)となっているようだ

 2018年から2019年にかけてユーロ圏は対中国の輸出志向もあって悪い指標を連発している。イタリアが2四半期連続マイナス成長でテクニカルリセッションに陥り、ドイツも辛うじてテクニカルリセッションを回避した。しかしその割には通貨ユーロのプライスアクションは弱くなかった。これはちょうどECBの次の金融政策が「何もない」の織込みで固まっているからであり、理論的に利下げ余地のあるオセアニア通貨等と違うというところもあるが、ここは思い切って通貨ユーロが日本円化しつつあるという思考実験をしてみたい。
GDP Growth
  ユーロ圏と日本の第一の共通点は長引く低成長である(ユーロ圏が青)。日本の低成長はアベノミクス導入まで基本的に円安要因にならなかった。日本の悪い指標も大昔から円安への反応を惹起しづらい。ファンディング通貨だからである。せいぜい〜2007年の世界高金利リスクオン時代に円金利が上がりそうにないということでキャリートレードが続く根拠になったくらいである。そのキャリートレードもその後のクラッシュでしっかりスクイーズされた。
Current Account
  次に経常黒字である(ユーロ圏が青)。低金利・量的緩和で資金が域外にリターンを求めて出て行った結果、ユーロ圏も日本も座っていると海外からの資金還流で通貨高圧力がかかる

 最後にPPP(購買力平価)で見ると円もユーロも過小評価されている。マイナス金利・量的緩和政策を行ってきたので当然であるが、OECDによると2017年時点の円の購買力ベースの適正価格は102.5、ユーロ圏19カ国のそれは1.37ドルであった。もちろん長期にわたって通貨レートが購買力ベースから乖離することもあるが、それぞれの通貨が観光客が殺到する程度には人為的に安く押さえられており、隙あらば戻る余地があるという見方もできる。

 ユーロが日本円化しつつあるとすれば、今は例えばドル円が120〜125円の時に日本が悪い指標を連発した時のプラスアクションと似て、通貨安圧力とリスクオフによるキャリー取引の巻き戻しのどちらが勝つか分からないということだ。たまにやって来るユーロ高の進行の仕方が往々にして資産が買われるというよりも突き崩されるようなプライスアクションになるのもファンディング通貨の特徴である。「ユーロ圏の解体」は「日本の財政破綻で超円安」と同じようなエクストリームテールシナリオである。もちろん本格的にECBが追加緩和に踏み込むような局面になるとユーロ版アベノミクス相場が来る可能性もあるが、今のユーロ圏はまだアベノミクス前のような、どんなに景気が悪くてもそれで円安にはならなかった局面のアナロジーにいる可能性がある。ユーロ安トレンドが続くには、むしろリスクオンが続いて再び米国と他の国々が利上げサイクルに入ることが必要かもしれない。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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