上海株の目を瞠るような上昇のきっかけにもなった中国の1月社会融資総額のブーストについて、李克強首相がケチを付けている。曰く、「表面を見れば社会融資総額は大きく増加したように見えるが、詳細を見ると、多くが短期の銀行引受手形調達と短期の融資(Bill financing and short-term lending)であり、これはキャリー裁定取引と資金の空転を招いているだけでなく、新たな潜在的なリスクをももたらしている」ということである。

 短期云々の議論は氏のリリースより先に本ブログが「中ではシャドーバンクに分類される短期の銀行引受手形(Bankers Acceptances)による0.4兆元程度のブーストが指摘されており、この部分は2018年には全く増えなかった短期の資金供与であるとして割り引いて見るべきだという議論もあったが、大半はやはり過去最高の伸び(3.6兆元)を見せた銀行貸出である」と一蹴している。キャリー裁定取引というのは、銀行への手形持ち込みによって資金を調達できる利回りよりも理財商品や銀行大口預金の利回りの方が高い逆転現象が起きることもあるため、企業が手形を銀行に持ち込むことによって無リスクで裁定キャリーを得られる場面があるということを言っているらしい。大口預金の利回りの出所は融資を受けた企業が支払う利息なので、非常にざっくり言えば高い融資を借りている企業のコストがキャッシュリッチ企業に一部移転されることもあるということである。しかしこれは瑣末な事象であり、たとえ一部で行われたとしても結局は大口預金金利と融資金利の低下に繋がるため、本来目くじらを立てるほどのことではない。

 それをどうして首相がわざわざ取り上げたかを勘ぐって見ると、やはり緩和策そのものに対する反感が根底にあるのではないか。前政権は2008年のリーマンショックの後に4兆元の財政出動を敢行して世界経済を救い、世界中から喝采を浴びた。現政権はデレバレッジ運動で成長の腰を折って世界中を不安に陥れたのと実に対照的である。ではデレバレッジ運動が間違っていた、やはり緩和策が正しい、と認めるのは自己否定に繋がる。そこで緩和に追い込まれ、緩和のニュースが流れるごとに「洪水のような緩和策はやらない」とネガティブワードを使っていちいち違うと言い張っているのである。「長期的な発展をファンダメンタルズから解決するのは構造改革と質の高い成長である」は正論だが、デレバレッジ運動でそれを達成できそうな気配はなかった。筋が良く質の高い改革やスローガンは2018年中にわたって一つも効かなかった。
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 いずれにしても、中金公司研究所によると社会融資総額(+地方債+国債)残高の伸び率(実線)は綺麗に名目GDP成長率(点線)に1年弱先行する。社会融資総額が最先行指標であることは揺るぎない。

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