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 2019年春にどうも中国の不動産主導の反発があったのは不動産投資周りの数字から読み取れる。住宅価格の数字も見てみると、どうもTier1都市(一線都市。北京、上海、広州、深圳などの大都会)主導で反発しているらしい。代わりにTier2(地方都市)は横ばい、Tier3(更に田舎の都市)は下落基調が鮮明となっている。2018年のデレバレッジ運動と共に行われていた住宅市場の引締めがようやく効いたのか。
Chengjiao
 CRICがまとめた全国336都市の土地取引面積も明確にTier1(オレンジ)とTier2(グレー)が2019年になってから反発、Tier3, 4が急落している。長期的に見ればこちらが当然の方向性ではあり、今までのTier3, 4都市の暴騰祭りの方が異常だった。
 
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 Tier3, 4都市の饗宴は棚改(棚戸区改造、バラック密集地改造)と呼ばれる、膨張する都市に取り込まれた元農村地域の平屋をマンション団地に作り替えるインフラ事業によって人為的に作られた。棚改は高速鉄道・高速道路・空港の次の目玉公共事業であった。特にチャイナショック前後から景気浮揚のために2015年〜2017年に1800万世帯、2018年〜2020年1500万世帯と大掛かりな事業計画が立てられていた。建て替えの原資は中国人民銀行のPSL(担保付き補完貸出)で賄われ、これに当たった計3300万世帯(≒1億人、つまり中国人民の13人に1人)には新築マンションを充てがわれ、超富豪になりたいとでも言い出さない限り完全に人生が上がる。上海近郊の旧い鎮レベルの街を歩いてみると、時間がゆっくり流れているのを実感できる。人々は喧嘩もせずビジネスにあくせくもしない。みな棚改待ちなのである。

 更に、今まで実物(新築マンション)補償では贅沢を言う住民の不満も絶えなかったため、2015年以降は棚改はマンションを充てがう代わりに、マンションを購入できる資金を直接ばら撒く方式も増えてきた(棚改貨幣化)。都市部のサラリーマンが働いても貯蓄もできない横で、全国13人に1人の農民はばら撒かれた現金を握りしめて膨張した街の住宅を買い漁っていった。インフラ整備とは言っても鉄道や道路は我々が大好きな乗数効果が見込める代わりに費用対効果が怪しいこともある。一方で棚改は直接人民に紙幣をばら撒くのである。小売売上高が毎年8〜10%増をキープできるのも当然なのだ。PBOCから資金を借りた地方政府は棚改に投入して地価を上昇させ、その上昇した地価で次の用地を売って資金を返すという壮大な自転車操業をしていたようだ。

 ところが、2018年は恐らく景気浮揚の前倒しもあって勢いよく計画の107%も作ってしまったが、さすがに2019年以降の棚改は減速が見込まれている。一方でいくつかの大都市ではデレバレッジ運動の退潮と同時に住宅購入のステルス緩和を始めたようだ。北京・上海はともかく、Tier2都市では少子高齢化に備えて人口増確保のために都市戸籍の取得条件を緩和してより田舎から人口を吸い上げようとする動きもあるようだ。これがTier1, 2都市の不動産が再びTier3, 4を圧倒し始めた背景だろう。3月の反発を我々は漫然と「減税などの財政拡張が効き始めた」と考えており、また一部の疑い深い参加者は「減税がこんなに早く効き出すはずがない」と考えているだろうが、確かに財政拡張と関係ない、古典的な不動産市況の回復が今回の景気サイクルを引っ張っていたというオチもあるかもしれない

 なお、今回の市況回復を指導部は必ずしも喜んでいるわけではなく、「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という指導部が大好きなフレーズが繰り返されたのも話題になっている。口先引締めだけでTier1, 2都市の不動産市場を崩すことができるかは分からないが、確実に祭りが終わったTier3, 4都市の減速(衰退)がどこかで経済危機を起こす可能性も中長期的にくすぶる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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