China Total Social Finance
 China Total Social Lending
China Total soicial Bonds
 1月分が中国株暴騰のきっかけになった中国の社会融資総額(Total Social Finance, TSF)の3月分が金曜に発表された。某最大手證券がこれを見て「景気論争は決着ついた」と言い切るほど申し分のないクレジットの回復である。2018年後半のクラッシュも足元の反発も中国の一挙手一投足を見てのものであったので、中国のクレジット回復イコール世界の景気後退回避というわけだ。

 TSF総額は2016〜2018年の非1月のボックスから頭が出ており、大半が銀行融資である。社債発行も順調である。1月分はスタートダッシュの季節性があるからそれだけではまだ分からない、と結論を先送りするのは良いとして、2月分は春節なのでこれも先送りするのも良いとして、3月分でいよいよグローバル景気後退シナリオへの希望は絶たれつつあるのではないか。景気回復でもグローバルで株が高すぎる、という話ならともかく、3月分PMIと3月分TSFを見ても景気論争に決着を付けられないようではマクロ投資家としての素質が疑われる。

 本ブログはもちろん1月分から「2018年の景気後退はデレバレッジ運動が招いたものであったとすれば、2019年1月の社会融資総量の再加速は景気回復に繋がるものと希望を持てる。足元の景況感の暗さを吹き飛ばす、極端なまでのグッドニュースである。景況感の悪化がいつ止まるかというと「今でしょ」である。もちろん季節性が大きく出る単月のデータを過度に重視するのは危険だが、幸先の良いことであることは間違いない」と飛びついており、2月分の弱さを見ても「貿易戦争を待つまでもなく中国経済をボロボロにしたデレバレッジ運動が完全に破綻を宣言された瞬間である」「2月単月の塩っぱい数字も、1月の伸びを完全に否定するものではないと言えそうだ。引続き中国のクレジット環境の緩和は続くと思われる」とポジティブに捉えてきた。3月の良い数字は本ブログの正しい見立てを確認するものでしかない
 
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 企業向け貸出を短期貸出、手形貸出、中長期貸出に分けて見る(右図)と、中でも中長期貸出が増えていることが分かる。左図は毎年の月ごとの中長期貸出増加分であり、2019年は絶好景気だった2017年につぐ速い進捗である。
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 個人向け貸出、特に中長期貸出も目立ったのが3月の特徴であった。不動産が再び大都市を中心に堅調さを取り戻しているのが背景だろう。
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 M1が伸びていないからTSFの伸びが効いていないではないかという指摘もあったし、大規模なM1の収縮を信用収縮と捉える声もあったが、3月のM1も反発に転じた。本ブログはもちろん「手形融資の増加はM1の伸び率に対して明らかに数ヶ月〜1年程度の先行性を持っている。M1の急落がどんな理由であれ、社会融資総額の1月のブーストで一役買った手形融資の急増は、今までの相関が生きていれば数ヶ月後のM1の反発をリードするだろう」としていたため、M1の反発も全く意外ではない。
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 あえてケチを付けるなら、省ごとの貸出伸び率を見ると2019年の伸びは沿岸部の広東省、江蘇省、浙江省、上海に集中しており、その集中度合いは2017年、2018年よりも激しい。これは銀行のリスクアパタイトがまだ慎重でありクレジットバブルからほど遠いことを示している。
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 もう一つケチを付けるとしたら、過去のクレジットバブルでは中長期融資の伸びが社会融資総額の伸びを上回っていた(シャドーバンクから中長期融資へのシフト?)が、今回の中長期融資はまだ落ち込みを修復しつつある程度であり、TSF全体の伸び率にまだ追いついていない。
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    なお全ての貸出まで含めると、シャドーバンクを含めたTSFよりも伸び率が大きい。

 マーケットの反応としては、1月よりも明らかに市場に重要視されており、TSFが発表された金曜17時頃から米債急落・円全面安の流れが始まった。米株や中国株などはとっくに回復を織り込んでいたため極端な動きとはならず、代わりにまだ「1月底入れ3月反発」シナリオを正しく織り込めていない市場(主に米金利、次に出遅れている日本株か)を探しては修正していく流れとなっている。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。