SSEC weekly
 本ブログは4月に入ってから中国発の引締めを狼少年し続けてきたが、思わぬところから弾丸が飛んできたようである。貿易戦争の最後の最後で中国側が恐らく「最悪10%関税のままでもいいや」と色気を出して強気になったところで、埒が明かないと思ったらしいトランプ大統領が週末にTwitterで「10日から一部の中国製品(3250億ドル)に25%の関税を掛ける」と宣言したのである。月曜の上海株は5%を超えるぶん投げ大会となった。「しばらくは中国発のポジティブなヘッドラインがあまりなさそうである」と本ブログは最後に記したものの、これはあくまでも景況感の話であり、トランプ砲は全くの予想外であった。

SSEC vs SPX
FT AH
 夜の部の米株は下がったところで押し目買いばかりが湧いてきたのに対し、上海株が一人脆かったのはポジショニングゆえだろう。上図は相変わらずの上海総合 / S&P 500である。4月半ばまでは二つの指数が同じピッチで値上がりしていたが、4月末にはトランプのツイートを待つまでもなく上海が急激に脱落している。H株対比(下図)でも一時2018年高値の30%プレミアムを狙ったが、その後急速に萎んでいる。
margin debt
 4月までの上昇は信用残高(Margin Debt)の積み上がりと共に進行してきた。上海・深セン両市場の信用残高は4/22に最高額の9823億元にのぼったが、そこから指数の上昇は止まってしまった。4月初の記事などでは「この信用残高は概ね3日間で100億元増えているため、このペースが続けば4月末には残高が1兆元に達するはずだ。大台に乗ってニュースになる頃には何らかの取締り措置があってもおかしくない」と4月末というクラッシュのタイミングまで預言していたが、結局1兆元そのものにも届かず別の理由でクラッシュしたのではただの偶然にすぎない。いずれにしても信用残高の拡大と共に指数が上昇していたとすれば、結局同じ人達がどんどんリスクを取ってよりコストの悪いポジションを積み上げてきたことを意味する。これが一回逆回転を始めると当然脆い。1月からフォローしてきた上海株の大相場が2450から3250までやったとして、実は既に半戻しに当たる2850が皮一枚となる水準に迫っていたのである。ポジショニングは新高値の米株より遥かに悪いに決まっている。

 なお、中国当局はトランプ大統領のツイートの重大性を十分に理解したらしく、月曜の場中にテクニカルRRR Cutを投入している4/27に噂されていたRRR Cutがないを当てた本ブログは豚まで持ち出して金融引締めの可能性を説いたが、あっさり掌を返されてしまった。もっとも、月曜のRRR Cutはあくまでもテクニカルなものであり、今まで11.5%のRRRであった中小地銀のうち、「一つの県(町)の中でのみ経営し、ないしは他の県に支店があっても総資産が100億元に満たない地銀」に限り、農村信用社(信組)と同じ8%のRRRを適用する、ということであった。3.5%という大きめな下げ幅に踊らされるべきではない。これによって不要になった準備金は約1000行の2800億元であり、メガバンクの1%引き下げが(MTF償還にぶつけられることが多いためネットで)7000億元程度の流動性放出であったことを考えると、質的にはともかく量的にはせいぜい1/3である。もちろん中国株はRRR Cutどころではない。むしろ裏を読みたくなるようなスピード感である。また正真正銘のRRR Cutではなくテクニカルな調整を入れてきたところがやや残弾尽きた感を醸し出してなくもない。或いは、元々質的緩和推進のために提案されていたのが、当局が賛成しつつも緩和策と思われる全ての調整を拒否していたところ、クラッシュを機にGOサインが出たのか。
HSI
 トランプ大統領のツイートを受けて中国側は予定されていた劉鶴副首相の訪米を取りやめる姿勢を見せたが、しばらくして撤回している。しかしそれでも10日の関税開始に間に合うかは怪しいし(スピーディな株価対策を見る限り当局もそう思っているはずだ)、万が一トランプ大統領のブラフ(と米株市場は思っている節がある)が効いて中国側の素早い再譲歩をもって何らかの合意が達せられたとしても、上海株に限っては逃げ場になるだけかもしれない。香港株はより米株に近い値動きとなっていたが、こちらは30000を何度も攻めていたロング勢がアイランドに取り残されているという高値圏なりの面白くないチャートとなっている。もちろん、中期的にはデレバレッジ運動の廃止と減税が控えているため中国株は「売り」ではないと思われるが、足元ではポジショニング的にロングの分が悪くなっており、押し目買いは慎重にやっていきたい。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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