ISM Manu
ISM Non-Manu
 10月初頭に発表された9月の米国ISM景況感は製造業・非製造業共に総崩れとなった。ISM製造業(上図)は47.8と景気拡大・後退の分岐点である50を明確に下回った。また絶対値が基本的に高いISM非製造業(下図)も52.6に急低下し、こちらも製造業で言うと50割れ並みのインパクトがあるだろう。背景はもちろんトランプ政権が続けている貿易戦争である。これまでは貿易戦争や環境規制で中国、欧州を中心に景況感が悪く、一方で内需が堅調である米国の景況感だけは大丈夫というのが通説であったが、それを粉々に打ち砕かれた一週間であった。更に、ISM製造業が滑った後も米国の内需が堅調なので非製造業だけは大丈夫という声もあったが、こちらも速攻で現実に押し潰された。
 

ISMは米国GDPとよく連動。特に非製造業

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 なぜISMが重要かというと米国のGDPをよく預言できるからである。上図(左)は製造業、非製造業ISMとGDP成長率。米国GDPに占める非製造業の割合の方が大きいため、製造業が海外要因などで一人谷を掘った時はGDPは非製造業により連動し、製造業を無視したことが多かった。(米国だけでなくドイツ(右)でも同じ傾向が見られるが、さすがに多少なりとも製造業に引っ張られがちである)そういう意味では心理的には非製造業の減速の方が打撃が大きかったかもしれない。左図の2015年もそうだったが、非製造業景況感は規模が大きくても所詮製造業景況感の遅行指標なのだ。
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 ISMがGDPと連動するとなれば、ISMの悪化は米国のリセッション入りを連想させる。発表前からBoAMLのGlobal Fund Manager Surveyにおける今後1年のリセッション入り回答(ネット)は堅調な米株を横目にうなぎ登りであったが、ISMでいよいよ懸念が確信に変わるだろうか。もっとも、GDPのマイナス成長に整合するISMの水準は43.2以下とされており、現水準は直ちにリセッションを示唆するものではない

ISMはS&P 500にも連動

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 GDPだけでなく、RobecoはISMとS&P 500リターンを比べた、更に直球なチャートも投げ込んで来ている。実際2回のISMの発表後に米株はそれぞれ少なくとも瞬間には売り込まれた。ISMを売買指示モデルに組み込んでいるマクロファンダメンタルズ重視の投資家が少なくとも何人かはいたということだ。

連銀景況感からの乖離

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 ここで気になるのは、先立って発表されたISM製造業と各連銀の景況感指数の乖離である。9月の5連銀の景況感の単純平均は52.9であった。各連銀指数をISM形式に規格化して過去との相対位置を取っても49〜52の間に収まるはずであり、少なくとも2ポイント以上はISM製造業だけ突出して悪い。米国Markit PMIとの乖離(上図)も同じ示唆を示している。もちろん、だからと言って連銀景況感が正しくてISMを軽視しても良いということにはならない。例えば最近ISMとの連動が薄れて来たことで話題のフィラデルフィア連銀景況感(下図)などはシェールガス関連の設備投資の影響が高まっており、全国予想に使いづらくなっている。

 一つの解釈としては、アンケートのサンプル数はISMが 300社程度、Markit が800社程度であり、これはISMの方が外需感応度が高い大企業、Markit PMIは中小企業が中心だからISMの方が景気の悪い海外により影響を受けると読み換えることもできるだろう。もっとも、その割には今までのISMのグローバルPMIへの反応が鈍くて今ひとつ納得できない。単にMarkit PMI対比で上下共にブレ幅が大きく慣性が大きいという見方もできそうだ。

グローバルPMIは小康状態へ

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Caixin PMI
 ISMの大企業が影響を受けたとされる海外の景況感はというと、JPMorganが集計したGlobal Manufacturing PMI(上図)は2018年から一貫して減速してきたが、ここに来て弱々しいながらも反発を見せている。貿易戦争で最も被害を受けるとされる中国の財新製造業PMI(下図)に至っては直近高値まで反発している。貿易戦争で一部の人が「中国が一方的に傷め付けられて米国は内需に支えられて堅調」と言っていたのが恥ずかしい大外しで終わったとはいえ、中国だけが回復する横で米国がリセッションというのも想像しづらい。米国とROW(Rest of the World)のデカップリング→リカップリングで「それ見たことか」「所詮米帝も張り子の虎」と騒げるのは一瞬で、前回いつだったかというとこの時である。米国の景況感がグローバルの後追いなら今回のISM減速もこの辺りで底打ちになるのではないか。

まだミニサイクルボトムと言い張れる水準

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 図はサブインデックスのうち、やや先行性があるとされている新規受注のISM製造業と非製造業の和。ここで跳ね返れば2012年、2016年と共にミニサイクルボトムで済むだろう。「GDPのマイナス成長に整合するISMの水準は43.2以下」という話と合わせて、まだ慌てるような時間ではないと思われる。奇しくも前回のS&P 500テクニカル記事では「中国PMIは発電用石炭消費量から見て恐らく7, 8月に続いて一時的に堅調で、ISMは今回もいまいちだが今回で底打ちというイメージ」としており、堅調な中国PMIといまいちなISMの逆デカップリングを予想できていたが、残る預言は「だが今回で底打ち」という痺れるフレーズである。いまいちどころでないISMを受けてもこれはあえて維持する。

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