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 久しぶりに為替について。冒頭の絵は記事の中身と関係ない。コロナショック後の米ドル相場の特徴として経済指標や金利差を見なくなった、そしてドル円がいよいよランダムウォークになってきたことが挙げられる。特に米ドルを米国景気や米金利と結びつけて考えていたなら最初から最後まで上手くいかなかっただろう。


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 早速、米株と米ドル相場の相関を見ていこう。2017年年初や2019年年末は米株高、米金利高、ドル高の組合せが見られたが、それ以外の期間では基本的に株高と緩やかな米ドル安が並存してきた。特にコロナショック以降は米ドルと米株の逆相関が顕著に強まっている。
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 チャートを並べるとより一層この傾向は鮮明である。3月の米株のクラッシュでは米ドルのファンディング危機が起こり、Fedが利下げを打ち込んでも米ドル高が続いた。Fedが更に各国中銀との米ドル供給スワップラインを拡充してようやくリスクオフの米ドル高が反転し、米株も反発に転じた。初動の米ドル安・株高の次は4月、5月のレンジ相場であり、米ドルも米株も概ねレンジが続いた。そして5月末から6月初旬にかけての激しい株高には激しい米ドル安が伴った。
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 日本から見ると見失いがちだが、米ドル高よりも米ドル安の方がグローバル株にポジティブである構造はチャイナショックから続いている。リーマンショックまでは米国が垂れ流した貿易赤字が新興国に積み上がっていたが、その後は原油安などもあって新興国の外貨準備の積み上がりは進んでおらず、むしろ米ドル高局面で取り崩されがちであった。一方で米国はテック企業の隆盛により、物のやり取りを経ないまま海外から米ドルを徐々に回収しつつある。リスクオフ局面になると米ドルを借りている国や海外企業にとってファンディングストレスに転換されやすく、米ドルの手当が必要となる。その際、米国経済がどうであろうと選択肢がない。たとえ米国経済が世界最悪で世界最低の政策金利になりそうと思っても米ドルを確保しなければならない。

 景気が良くインフレ気味の国の金利は上がりやすく、そうするとその国の債券や株に投資が集まりやすいから通貨が値上がりしやすいなどという論理はリーマンショック前の、各国共に金利が残っていた時代の発想である。現にノルウェーが2019年に1人利上げした時もその通貨は特に増価しなかった。すっかり死語になった円キャリー取引が健在だった時代、どの国の方がもっと金利が上がって資金が集まりそうか、買い物目線で我々は諸外国の通貨を見ていたが、今は自然体でも米ドル不足の参加者が多いので買い物どころではない。一方、米国景気が良くなりそうと思っていてもどうせ米金利は上がらないので、そこで米国に改めて資金が集まって米金利高ドル高などという組合せも白日夢になりつつある。むしろ、気持ちに余裕ができると米金利の(過去対比の)絶対値の低さが気になってくるのではないか。

 特に足元では、たとえそれが米国でもロックダウンが進むと米ドル不足が懸念されやすくなり、ロックダウン中でも稼働できるテック業界とテック株がひたすら海外から米ドルを吸い上げることになりそうだ。一方でリオープンとなると6月初頭のように日欧株の方がキャッチアップし、また米国景気が回復すれば米国の輸入が増えやすくなるためドル安になるやすいように見える。金利差はどうせ感染具合の温度差で決まらない。世界がより一層米ドル依存を高める中で、逆はともかく米国が利下げすれば諸外国も追随する。感染者数が増えそうな国がなんとなくの景気懸念で通貨安になり、減りそうな国が通貨高になるという話であれば人民元などは今頃対ドルで5.0台になっていなければならないのではないか。筆者はここからの米ドル相場の方向性の予想はできないが、たとえば米ドル高ベットがリスクオフベットであることくらいは自覚しながらポジションを持ちたいものである。決して逆ではない。
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 金利差や景気格差などよりは、まだFedの超過準備(これは概ねFedのバランスシートの大きさに比例する。超過準備を増やすためにバランスシートを膨らませることもある)の方が米ドル相場との連動がよい。もっともこれらのチャートが恐らくは言いたかったであろう、超過準備の爆増が激しい米ドル安に繋がるかというと、他国中銀も同様にバランスシートを拡大しているし、米ドル調達への不安はまだ心のどこかに残っているだろうし、何よりもこの過剰流動性は年後半の米国債増発に吸い込まれそうなのが分かっているので何とも言えない。
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 その中にあって日本人はそれでも律儀に米金利を見ている方であり、従ってドル円は他通貨の「リスクオフはドル高」から一歩引いているが、その結果「マクロプレイでは動かない」状態に落ち着いてしまい、突発的なフロー(いまだに正体はよく分かっていない。M&A絡みが多いか?)で右往左往するだけになっている。日米金利差が大きく縮んできたため、またドル円の為替ヘッジコストも大幅に低下してきた中でわざわざ為替リスクを取ってのオープン外債投資は割りに合わなくなりつつある。しかしそうは言ってもオープン外債投資の主体は少し前に年度の運用計画を立ててしまったであろうから大々的にヘッジを増やすのはしばらく後と思われ、だとするとドル円は案外しばらく日本側のマクロ事情で動きやすくなるのだろうか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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