US CPI 
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 米国のコアCPI(上図緑)は堅調であり、アパレルや航空運賃が外出の減少で崩れる中でも全体としてデフレに転落する雰囲気がない。目立ったのは中古車価格(上図青)の上昇であり、8月分CPIではこれがコアCPI前月比上昇分0.4%の4割以上を占めている。中国でも同じ傾向が見られているようだが、公共交通機関の利用を避けるために自家用車を揃える動きがあるようだ。新車の方は生産が止まっていたことから品薄だったり品揃えが悪く、また給付金をもらえたとはいえ消費者にも節約志向が広がっているようである。またレンタカー企業の経営悪化により、新車を購入して中古車を供給するフローも鈍っている。少し前に破綻するレンタカー企業による処分が中古車相場を押し下げるのではないかと危惧されてきたのとは隔世の感がある。
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 一方今まで安定して伸びていた家賃(上図赤)の下落も鮮明になっている。都会で職住近接していた人達が密を避け、またどうせリモートになるな権力らと郊外の広い家に移住し、車通勤に切り替えているようだ。都心の空室率は上がっている。「主要都市での需要減により、家主が新たな賃借人向けの家賃を引き下げざるを得なくなっている状況」との観測もある。強制退去の検索件数も増えてきた。

Mizuho House  
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 もっとも賃料は下落したが、米国住宅市場そのものが傾いているわけではない。住宅販売件数は新築中古ともにV字以上の回復を見せている。郊外化についてみずほ総研は以下のように述べている。「ベージュブックでは、ボストン連銀、ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、リッチモンド連銀、 シカゴ連銀、サンフランシスコ連銀等がこうした動きを報告している。一部の地域では、住宅市場の過熱感を伺わせる報告がみられるほどだ。クリーブランド連銀は「低金利と住宅在庫のひっ迫が、住宅購入者に危機感を植え付け、住宅販売に拍車をかけた」と報告している。またリッチモンド連銀は、「客足が増加しており、顧客は真剣に購入を考えるようになった。多くの家が現物を見ずに購入されており、一部は数時間で売られたものもある」と報告している」。
Lumber
 実際、住宅建築で使われる木材は需要の急増により値上がりが止まらない。
Morgate Rate
 郊外への移住意欲だけでなく、金融緩和のおかげで記録的な低さになった住宅ローン金利も住宅取得を後押ししている。生活様式の変更はコストがかかるのでお金になる。米国の経済回復は住宅建設主導になる可能性がある。また、各連銀ともに不動産バブルの芽を観測しているとすれば、テーパリングはないとしても、新たな金融緩和策が導入されるのは債券市場にストレスがかかった時に限られるだろう。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。