TSF
 中国の景気の先行きを定めるクレジット供給(社会融資総額, TSF)を久々に確認したところ、思いのほか健全な構図となっている。胡錦涛・温家宝政権の全世界から喝采を博した大規模な財政出動への個人的なコンプレックスからか、習近平政権はともすれば経済成長を阻害するデレバレッジ運動を強化しようとしてきたが、コロナショックの緊急事態を肉弾戦でなんとか脱した今も例外ではない。1月末にPBoCがインターバンク流動性の吸収姿勢を示したことから金融引締め懸念が高まった

Long Term New Credit
 流動性はともかく、クレジット供給の方は今のところ堅調である。毎年1月は新年の駆け込み融資でTSFが急増し、春節もある2月は反動で減るのが常である。2020年はコロナで一旦クレジットも萎縮したが、3月以降は経済を支えるために銀行融資は増え続けた。その昨年の数字を今年は1月も2月も超えてきている。
TSF change
 クレジット供給の増分の中身は図の内訳を見ると中長期の銀行融資が牽引している。公的部門の債券発行が足を引っ張っている。銀行はデレバレッジ運動で総量をあまり増やせない雰囲気の中で、銀行は限られた融資枠を中長期のオンバランス融資に思いっきり振り向けた。オフバランスの社債発行やシャドーバンクは優先度が低かった。不動産向け融資の総量規制が敷かれる中、資金需要は製造業に集中していたと思われる。というわけで完璧な中身である。
M1
 銀行融資はM2前年比伸びの反発に繋がっている。春節前に企業は個人に臨時ボーナスを払うことが多い(企業預金M1から個人預金M2への移動)ため、春節が1月にあった2020年1月はM1が凹み、春節が2月に移った2021年では1月M1が前年比で膨らんだ。代わりに2月のM1は昨年からのトレンドラインを割り込む形で低迷している。これも2月に起きた家計への移動によるノイズにすぎない可能性が高いが、3月以降のM1には要注意である。中期的には当局が決めた「(これ以上レバレッジを高めない)穏健な流動性維持」が年度ベースで守られるとすればM2伸び率はGDP成長の6%とインフレの和近辺に着地するはずで、とすれば今後数ヶ月でTSFも盛り下がってくる可能性が高い。M1は依然先行指標として注目する価値があるだろう。
China credit 10Y TSY ES 2021-03-01_7-11-39
China m1
 海外投資家が重視するクレジットインパルスの算出方法は今一つクリアではないが、概ねM1と似たような推移を辿りそうである。

 金融政策は1月に発作的な引締めが行われた後に続報はなく、引締めが更に強化されそうな雰囲気は特段見られない。財政の方は全人代で財政赤字目標が2020年のGDP比3.6%から3.2%まで引き下げられており、中央政府のケチ度が高まっている。(中国以外で話題に上がることすらない)レバレッジとやらが爆上げした上で財政出動も止まらない先進国と比べると中国の政府による経済成長サポートは相対的には非常に引締め的であることは間違いない。その政権による破壊的な経済成長妨害に対して民間部門は楽観さで乗り切ろうとしているが、果たして。

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