SPX
 先週のS&P 500は一度二番底を付けてから反発し、先週の記事で「広すぎて役に立たないが4060 -4230間でのレンジ推移が続くと見るべきか」としていたレンジの下半分での推移となった。レンジ下限の4060に対して実際の安値は4061であったので上出来だろう。一方レンジの上半分では値動きが重かった。

VIX
 二番底の方が暗号通貨が値崩れしたり、住宅着工が滑ったりとファンダメンタルズ的な懸念材料が多かったが、これらは後から付いてきたものなのでVIXは指数より遥かに冷静であった。VIXは20割れは定着しなかったものの新値を付けるわけでもなく、こちらもレンジ内での推移となっている。である限りシステマティック勢の存在感は限定的になりそうだ。
-1x-1
 インフレ懸念により株と金利の60日相関は急速に高まっている。これは先週の記事でも触れたが国債と株の分散効果が効かなくなっていることを示唆し、引続き株と債券の分散効果をベースとするシステマティック系ファンドのリターンを不安定化させポジション拡大を躊躇わせるものである。

 裁量系投資家については、DBのポジショニング的にもBofAサーベイを見てもパンパンのポジションから降り始めていることを示唆している。であればVolの低下か国債との相関の低下でシステマティック系投資家を表舞台に追い出して対抗しないと上値の重さは払拭されづらそうである。
SP-500-vs.-Retail-Favorites
 個人については選好するセクターのリターンが低迷していることから体力が削れており、裁量系投資家の利食いに対抗するどころではなさそうだ。
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 一方、納税期限前の個人投資家の売りは一巡しているとも期待できる。過去の例を見ても納税期限をすぎてから2週間のリターンは好調であることが多い。今年の期限であった5/17から数えてあと1週間残っているが果たして。
Cumulative-Flows-Into-Tech-Energy-Materials-and-Financials
Weekly-Tech-Equity-Fund-Flows
 リフレトレードに資金が殺到している一方、テックへのフローは低迷している。このあたりはBofAのFMサーベイの示唆と同様である。
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 ファンダメンタルズ的にはシティエコノミックサプライズが超絶回復からマイナス転している。微分値なので景気後退を意味するわけではないが、リオープンプレイはそろそろきつくなるか。
SP-500-and-U.S.-10-Year-Real-Yield
 昨年はこれだけ見ていればよかった10年実質金利とS&P 500の相関は今年になって完全に壊れている。3月の実質金利上昇がもたらした指数の調整は一時的に終わったし、その後再び下がり続けたにも関わらず指数は反応していない。需要主導のインフレ期待が供給主導のインフレ懸念まで発展すると株は思ったよりも脆弱になるようである。
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 短期のインフレブローアップによりS&P 500の実質益回りもマイナスに転じた。もっともリオープンに伴う短期的なインフレをマネタイズすることはは実業家以外にはできないので、実質益回りがマイナスになったからとて資金を移す先はあまりない。
MAAIN
 NAAIMは二番底の雰囲気に影響されておりどんどん悲観方向に下値を掘っている。これと現実の値動きの乖離はショートカバーの燃料になり得る。

 テクニカルには、レンジの下限は見事にサポートとしてワークした。しかしレンジ中間まで戻ったところでオッズは再びトントンに戻る。週末も動いている暗号通貨関連への警戒もあってレンジ中間まで戻った金曜の日足は上ヒゲとなった。そのせいで週足は長い下ヒゲを引いたとはいえ、下ヒゲ陽線に作ることには失敗した。レンジ上半分では値動きは引続き重そうだ。一方週後半からアウトパフォームしたナスダックは週足下ヒゲ陽線を完成させており、日足ヘッドアンドショルダーを作って以来初めてナスダックの方がS&P 500よりチャートが強くなった。下値の方は4060が引続きサポートとなるが、仮に3回目のトライで破られたら更に下値が脆くなってしまい調整が一段と本格化する可能性がある。そうならない限りはレンジ内での推移を引続き想定するが、レンジの上半分ではまず日足上ヒゲの4190を超えられないと話にならないだろう。超えれば過去最高値の4230が次のレジスタンスとなり、それをもブレイクできれば今回の調整をなかったことにできるが心理的にはやや遠い。早期にブレイクをトライするよりも、ある程度レンジ内での推移が続いて値幅が落ち着いた後に上値を試す方が健全そうに見える。ファンダメンタルズが失速懸念に晒される中でラリーが続くとすれば再びナスダックのショートカバーが主導することになるか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。