SPX Daily
VIX
 先週のS&P 500はやや荒れた。本ブログはここ数週間にわたりショートを禁じながらも上値追いにもやる気が出なかったが、待っていれば下値はやや広がったし、かと言ってショートしても実りが少なそうであった。5月以降すべての調整局面は50SMA近辺で反発し、その都度VIXは10台から22~30の間まで上昇してピークアウトしている。またこの期間(3月に長期金利がピークアウトしてから)伸び悩みが目立つラッセル2000もその都度長いボックスの下辺を付けているがまだボックス内にとどまっている。更に、5月以降のこれまでの調整の安値は全てその月の19日近辺に付けており、今回も例外ではない。つまり、このまま今回の調整が終われば全ての意味で予定調和な調整であったということになる。

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 久々にDBのポジショニングが流れてきた。統合ポジショニングは過去最高圏から反落している。先立って裁定勢は乗り遅れる恐怖と戦いながらもポジション削減をはじめ、直近でシステマティック勢の売りも共鳴した。システマティック勢の中で売りを主導したのはCTAであり、リスクパリティはだいぶ前からやる気がない。Volコントロールは低ボラティリティの恒常化を受けてポジション積み上げを続けている。VIXが10台半ばまで低下するに伴いVolコントロールのポジションも既に過去最高水準に近付いており、積み増し余地も最後の一息というところである。
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 BofAのFMサーベイの株式オーバーウェイト率も概ね上の裁定ポジショニングと連動しており、経済先行き期待は少し株式オーバーウェイト率に先行するように見えるのを重視するならば、今後はデルタ株の拡大、中国の減速などで経済先行きが暗いと判断されれば裁定勢のポジション縮小が始まることになる。このあたりの複数の懸念材料はずっと話題にしてきたものの、いつ本格的に材料視され始めるかはいまだによく分からないし、この分からない「いつ」には最大級の注目が集まるだろう。米株指数には景気とあまり関係ないGAFAMが鎮座しているので経済先行きを材料としても売りづらさがあるが、米株以外、特にアジア株などは既に豪快に売られている。コモディティも徐々にデフレーショナリーな動きが浸透してきており、一方でFedのテーパリングスケジュールはだんだん硬直的になってきており、コモディティが下がっても金融緩和延長を直ちに想像しづらい。
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 以前にも触れたように8月への株式ファンドのインフローは夏休みで鈍りがちであり、裁定勢もシステマティック勢も全体として上値追いをしていないとすれば、買い圧力はこれまた以前触れた自社株買いあたりだろうか。いずれにしても、下値叩きが一段落したと思った時の押し目買い圧力が相当強いのは事実である。

 テクニカルには、冒頭に述べた通り今のところ予定調和な調整に収まっている。過去のパターン通りなら今から調整分を全戻ししてから1~2ヶ月程度の高値圏膠着が続くことになる。一方、今回だけは50SMAにタッチすらしないで反発しているわけであるが、もし4350近辺で推移する50SMAを更に割り込むようなら5月以来の「息抜きを挟みつつのじり高」パターンからの逸脱となるので、それに慣れてきた参加者の改めての恐怖感によりそれなりに下値余地ができる。またその場合VIXは定例パターンの20台半ばを超えて30にも乗ることになるだろう。もっともリスクパリティの一貫した不参加からそのパターンの調整になったとしても調整幅は10%にも行かなそうである。調整終了パターンとなっても上値余地が薄いことを考えると調整継続にベットする方が割に合う気もしなくもないが、改めて悪材料がすぐに取り上げられるとも想像しがたいし、そもそも裁量勢の大がかりの売り崩しというのも長い間見られていないのでイメージが付かない。それがないとすれば8月アノマリー通過、調整パターン通過による買戻し、そして自社株買いとVolコントロールの積み増しが淡々と続く形となり、その場合がアホらしいのでショートは引続き封印となる。一方で過去最高値まで残りせいぜい1%程度の水準に位置しているし、たとえ過去パターン踏襲が選択されたとしても毎回(堅調期間は十分長いものの)「新値に売りなし」と言えるほど吹き上がるわけでもなかったので、高値を追いかけてもオッズがない。結局引続きやる気なく押し目待ちとなるか。仮に4350を割ってすぐ戻さなかった場合は下値余地拡大に要警戒となる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。