Umich and CB
 米国経済がリオープンして以来、ミシガン大学の消費者信頼感指数の低迷が続く。最新の10/1発表分は前回と比べて辛うじて反発したものの、依然コロナショックの最中よりも悪い。ミシガンが滑り始めた当初は「カンファレンスボード(CB)消費者信頼感指数と比べてミシガン大(上図・赤)のサンプル数が500しかないので頼りにならない」などという解釈もあったが、結局(絶対値こそ違いがあるものの)カンファレンスボード(上図・緑)も低下してきており、サンプル数云々は意味のない豆知識となった。豆知識で言うとカンファレンスボードは雇用情勢がより反映され、ミシガンはインフレ懸念がより反映されやすい。

 ミシガン大のサーベイは家族の財務状況、全国経済のアウトルック、そしてよく参考にされるインフレ期待などいくつか質問項目に分かれているが、せっかく分けたもののインフレ以外はほとんど同じ回答傾向となっている。失業中は手厚い給付金をもらい続け、その後のリオープンで好条件の求人が山のようにある中で、どうして消費者のセンチメントが悪いのか。

Umich Inflation Expectations
 悪さをしているのはインフレ期待と思われる。今年に入ってから始まった一時的なインフレは短期のインフレ期待上昇に繋がっており、また長期のインフレ期待も2013年からの低下トレンドから反転して緩やかに上昇している。
US Headline CPI
 インフレ期待はまさか経済予測に基づいて無から出てくるわけがなく、当然現実のインフレを見ての感想である。実際ミシガンの消費者インフレ期待と米国ヘッドラインCPI伸び率を20年間並べてみるとそっくりである。
Umich Buying Conditions
 「大規模な家財道具を購入したり、家、車などのような大規模な購入をするのに適しているかどうか」という質問への回答(Buy Conditions)はインフレ期待の盛り上がりと共にリーマンショック以下の水準まで悪化している。
Umich Buying Conditions Highpx
 理由は当然値上がりしたからである。インフレ期待が高まると後で買うよりも今買った方が安いので更に需要が集まってスパイラル状にインフレが加速しやすい(逆もしかり)とする学説もある。口は嫌でも身体は正直で結局高い買い物をしてしまう可能性もあるが、少なくともアンケートでは「高い時は買い時ではない」と真逆の回答が示されている。
Gallup vs Gas Prices
Gallup vs Michigan 
ICS vs Gas Prices
 特に、米国の消費者センチメントはガソリン価格と反比例することが知られている。ミシガンより頻度が高く、またミシガンと連動も悪くないGallup US Daily Pollの週次センチメントはガソリン価格と連動する。やや古い記事となるが長期データでもミシガン消費者センチメント(Index of Consumer Sentiment, ICS)とガソリンがうっすらと逆相関にあることを確認できる。ガソリン需要は非弾力的なのでガソリン価格の上昇は消費者の可処分所得を腐蝕する。特に1970年代の記憶が残っている世代にとってインフレは悪夢である。

 まとめるとミシガン消費者センチメントはガソリン価格の裏返しという要因が大きく、「物価上昇で可処分所得が減る」以上のセンチメント的な先見性あまりない。一方、以前の記事でも「貯金がないのにテレビが値上がりしそうというだけで2台目のテレビを買って1台目の横に置くことはしない」としていたが、少なくとも家や家具、車のようないつ買ってもよさそうなグッズに関してはインフレとインフレ期待は購買意欲を加速させるというよりも減速させるため、消費者マインド発のインフレスパイラル懸念も極論に見える。

関連記事

 米国の物価上昇が一時的との見方が優勢になるか

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。


この記事は投資行動を推奨するものではありません。