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SPX daily  
 先週のS&P 500は大荒れになった。まずはテックや半導体主導で上値を伸ばしたものの、短期金利の上昇などでその日のうちに上から押し返されて日足が長い上ヒゲ陰線になり、そこから週央にかけてもう一度押し目買いが入ったものの、サンクスギビング休み明けに材料視され始めた南アのオミクロン株でアジア時間から激しいリスクオフになり、サンクスギビング翌日にあたる金曜は米株がオープンした後もアジア時間のリスクオフを引き継ぎ半日間続落した。一週間の値幅は4740 -4590と久々の大きさとなった。先週の記事の「4720の手前ではオッズが悪そうである」という直感はよかったものの、「4670 -4720の狭いレンジで抜けた方に進みやすいか」と考えていたのは呑気すぎた。上には抜けたし、上に抜けた後は付いて行ってはいけなかった。下に抜けた後は売り場ということになったが、一度は4700を奪還しているので、結果的に「下抜け=下落継続」は合っていたものの、本ブログが想像していたような勢いや経路でそれがなされたわけではない。

TNX
implied rates hike
 金利は週初めから国債入札の連続不調という形で悪さしたが、週半ばは金利上昇と金融株上昇という組合せになり、一方で金曜には一気に10bp以上低下した。まさに今週にゴールドマンが「Fedはテーパリングは途中でペースを倍増し、2022年には3回利上げを行う」と予想を出しており、リスクオフになっても金融政策がハト化に切り返しづらいとなると株、債券が同時に顔面着地してしまうところであったが、幸い金利は素直に下がった。短期金利が織り込む2022年末までの利上げ回数はまさに3回の手前で折り返した。もっとも一時的なインフレ高騰への政治的な圧力は残っており「株が下がったら利上げやテーパリングを減速させればよい」という反応経路は本来塞がれているので、過剰な織り込み剥落は簡単であるものの、ある程度まで金利が下がったら短期~中期はスティッキーになりやすく、バッファ機能が徐々に失われる可能性が高い。一方、2018年の2割調整に繋がった時ほど金融政策の機動性が喪われているかというと、さすがに同じパウエルFedが同じ12月会合で同じ間違いは犯さないだろう。
Growth and Value ETF
 株は更に素直に下がった。アジア時間が先行してマクロリスクオフを織り込んだ時は米株がテック中心に強さを見せて切り返すケースがこれまで多かったものの、今回は米株も寄り付きから一直線に更に下落した。セクターで言うと週前半に金利上昇懸念でテックが売られた時にリオープンやバリューに逃げ込めばいいと思っていたところ、逃げ込んだ先が直撃を受けた形になっており、またあまり話題にならない中で本ブログだけが延々と取り上げて上値追いを渋ってきたように、テック中心の直近の上げはコールオプション主導の筋が悪いものであったため、一旦失速すると(コールのアンダーライターにとってヘッジの現物ロングがどんどん不要になるため)崩れやすくなる構図もあったと思われる。GAFAMやSOXなどは値動きを見ているだけで射幸心を煽られたものであるが、その体勢で顔面にフルスイングを受けると脆かったということである。リオープンが挫折するのだからARKKを買い上げようという余力もなかったようだ。コロナショック対策を最初に打ち出した時と違ってインフレになることも判明したので再び金融緩和と給付金で「在宅に売りなし」を演出できるかは怪しい。
VIX 
VIX at its highest
 VIXは一気に30に迫った。これは夏以来の19日に向かっての月次調整より(当然ながら)大規模なブローアップであり、9月末の恒大懸念とサプライチェーン懸念加速3月の金利上昇懸念、そして1月末のアルケゴスショック以来のマグニチュードとなる。今年の特徴としてリスクパリティの存在感がほとんどないというのは今でも続いていると思われるので、テクニカル要因だけで10%調整が入る蓋然性は高くないが、それでもシステマティック勢の買い出動がまたしばらく抑制されそうである。裁定勢も景気期待が再開したところに直撃された形となっており、反発はしばらく個人頼りになりそうに見える。週末の間にオミクロン株が欧州全体に広がっているが、重症化しやすいか、既存ワクチンが効くかどうかについてはまだ見守る必要があるだろう。
NAAIM
 NAAIMは木曜時点のデータなので依然ユーフォリア域にあり、これが高ければただちに暴落しやすいわけではないものの、上昇余力よりかは下落のマグニチュードの方が高そうに勝負はスキューしていた形となる。
HYG 
HY and IG Spreads
HYG vs SPX
 ハイイールド債は何らかのレンジを抜けたら加速するみたいな素質を特に持っていないと思われるが、足元で短期金利上昇とリスクオフ(スプレッドのワイドニング・2枚目の赤)の二重苦を受けて下抜けている。10月以来HYGはS&P 500に対して趨勢的にアンダーパフォームしてきたが、後世「この時もHYGが先行して警報を発していた」などと言われるようになるだろうか。
SPX thanksgiving yearend return
 最後にテクニカル。週足は大きな上ヒゲ陰線となっており、数週間単位で過去最高値を取り戻せなさそうであることを示唆している。遠すぎてもはや意味がないが4740が週足レジスタンスとなる。下値余地はというと50SMAの4525あたりがまず目に付く。これまでは毎月19日近辺の月次調整でも50SMAまで行っていたのだから、VIXが一段と上に行ったにもかかわらず50SMAの遥か上で底打ち反転したらやや驚く。とはいえもし来週になってもマクロ的な悪材料がこれ以上広がらなかったとしたら、テクニカルだけの勢いはせいぜい50SMA近辺までではないか。200SMAや週足50SMAの4200台はさすがにかなり遠いだろう。

 ナスダックの日足はもう少し分かりやすく、やや汚いヘッドアンドショルダーを形成している。月曜に一旦下がった後の反発(右肩)が再びの高値追いに繋がるものだったのか、ただの下げ初動からの自律反発だったのか、という問いがH&S完成で答えが出てしまい、15850が右肩レジスタンスとなる。15850を奪還できれば再び高値追いを再開しても問題ないと思われる。それまでは妙に近いこのレジスタンスを背にショートを張ってもバチが当たらないはずであるが、最近のテックのゴリゴリな買い上げを見せつけさせられ、更に年末アノマリーと世の中の過剰流動性を考えるとすんなり下がる図はあまり想像できない。同様にロングを下で投げて更に下で買い戻す試みも芸術的な手腕を必要とする。一方15850の直下では相当ロングのオッズが悪いことだけは明白であり、多少跳ねたところで急いで付いていく理由はあまりないし、下がったところで逆張りで押し目買いを入れるにしても15850までに限定されるリターンとリスクのバランスを考える必要がある。S&P 500のヘッドアンドショルダーは、もしそう表現できるとしても更に汚いが、4700がナスダックの15850と概ね同じ役割を果たす。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。