Japan Mutual Fund Flow2
Japan Mutual Fund Flow DC2 
Nikkei Mutual Funds Flow
 コロナショック以来、日本人の外株シフトが止まらない。日本の公募投信へのフローを見ると2020~2021年は外株しか増えていない。DCには辛うじてバランスファンドにも資金が入っているがやはり外株ほどではない。一方国内株式は全く見捨てられてしまっている。本来なら日本株が最も馴染みがあるにも関わらず、である。その辺のアンテナが高い港区女子ですらだいたいS&P 500投信か、GAFAMとNVDAを保有している。

 馴染みのある本国資産に資金を振り向きたい気持ちをホームアセットバイアス(ホームバイアス)と言う。ホームアセットバイアスとは国際資本移動が自由化され、国際分散投資に対する障壁が除去されているにもかかわらず、ついつい自国のアセットに優先して投資してしまう、非合理的な行動の一つとされる。とは言っても「他国のことは言語の壁もあってよく分からないのでαを取れそうにない」という判断が背景にあるなら非合理的とは必ずしも言えない。個別株投資をするなら、馴染みのある本国の銘柄にしたくなってしまうのは人情である。

 しかし、インデックス投資こそ正義である、となると話は別である。S&P 500に投資するのにアメリカについて詳しくなる必要も、英語のニュースや開示を読む必要もない。個別株なら日本株の方が情報を取れてエッジを効かせられると思ったとしても、インデックス同士なら当然トップダウンから入るようになり、名目GDP伸び率の格差を考えると日本株に投資する理由が全くなくなってしまう。金融庁が正体不明の怪しいブロガーと提携して「フィーが安いインデックス投資こそ正義」を推すにつれて、日本株インデックスよりも米株インデックスを選好する流れが生まれるのは当然である。つまり金融庁のインデックス投資推奨は資産運用のドル化を進めることになる。日本株のアンダーパフォームも一部は金融庁と怪しいブロガーのおかげであると思われる。

 DB(Defined Benefit Plan, 確定給付年金)からDC(Defined Contribution Plan, 確定拠出年金)へのシフトも資産運用のドル化を進行させる。企業年金であればボラティリティも考慮した政策アセットアロケーションに従う。確定給付年金は負債側が円なのでそこまで積極的に為替リスクを取れない。しかしそれがDCにシフトして社員一人一人の判断に任せられるなら、とりあえずオールカントリーに振り向けたりと、DB時代よりも株化、ドル化の傾向が見られそうではないか。

 資産運用のドル化という流行から連想されるのはまず慢性的なドル高円安である。FXならリスクオフになればポジションクローズのフローが見られる。(為替ヘッジを付けない)債券投資も日米金利差が縮まればやる意味がなくなってドル円の下落要因となる。しかし株へのフローはそう簡単にはリパトリエーション(本国への資金還流)しない。海外REITや海外債券のタコ足分配投資信託が健在だった時代なら分配金捻出のための円へのリパトリフローも見られただろうが、タコ足分配が悪であり、再投資で複利の威力を享受するのが正義である、と言われるとリパトリフローもなくなってしまう。

 S&P 500が日経平均を毎年15%アウトパフォームしそう、という強い信心を持っていれば、たとえドル円が5%下がりそうと確信してもリパトリしないだろう。強い信心があれば外株がクラッシュしても海外投資から撤退しない。国際債券投資がドル円相場をドミネートしている間は参加者が日米金利差を気にするためドル円も日米金利差に連動しそうであるが、国際株式投資がドミネートするとなると日米金利差など誰も見なくなるので日米金利差との相関は薄まりやすそうである。ましてや米国のインフレに勝ちたいとは誰も思っていないので日米の実質金利差はもっと役に立たない。それが2021年に起きた事象と思われる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。