SPX Daily
 明けましておめでとうございます。S&P 500は年末に急騰した後に年始に急落した。年末最後の記事では「とりあえず4630を背に緩く強気目線で構えつつ年末年始を過ごすことになるか。1月はFOMC議事録への反応も見たいしシーズナリティ的にも調整しやすいようなのでもう少し慎重に構えることになりそうである」としていたが、日柄的には完璧であったと言えるだろう。QTの詳細が出て来ると危惧していた議事要旨では現にQTが出てきて大騒ぎになり、相場はナスダックを中心にクラッシュした。年初の一週間でS&P 500は1.9%下落し、これは月初にしては上海株がストップ安やら何やらで騒いでいた2016年以来の下落幅となる。FOMC議事要旨のタイミングでQTネタでクラッシュするのは本ブログの読者であれば全くサプライズがなく、あまりにも予習通りの展開になっているので、市場参加者がどこまでペインなのか想像できず逆に戸惑うところかもしれない。

2y Treasury Rate Weekly 
IMG_5267
IMG_5276
 リスク資産が調整したのはもちろん米金利が急速に上昇したからである。議事要旨を受けた1週間の実質金利の上昇幅は歴史的とまではいかないものの、30bpとそこそこ大きいものとなった。短期金利も同様である。そうは言っても実質金利そのものは10年でせいぜい▲1.1%から▲0.8%まで上昇した程度であり、まだまだ極端な低金利の範疇に入る。従ってこの程度の金利上昇がUS経済やリスク資産の大クラッシュに繋がる必然性はないものの、そもそも株のバリュエーションも極端な低金利のおかげで極端に高くなっていたのならある程度の調整は仕方がない。
IMG_5277
 GSは名目金利ないしは実質金利に2シグマ以上の変動が見られたらその後1ヶ月のS&P 500は平均でも中間値でもネガティブリターンになるが、今回はどちらのケースにも当てはまるとしている。Bbg Expensive Software 
Bbg Expensive tech 
Bbg BTC
IMG_5286
 特に極端に高いこのあたりがデレバレッジに見舞われるのは仕方ない。仮想通貨も影響を受けている。もっとも足元ではこれらのセクターから脱出した資金はまだ株式市場にとどまっておりセクターローテーションで済んでいる。従ってナスダックを重視すると調整は体感ではもう少し激しかったものの、S&P 500の調整幅はあくまでも限定的である。モルスタは過去の金利上昇局面では高いハイテクは平均18%調整してきたが足元は既に15%の調整が済んでいる、一方でS&P 500の2%の調整幅は過去の事例の半分しかないため、ここからは指数の方がダウンサイドが大きいとしている。
RPAR Risk Parity
 株と債券のダブル安になったのでリスクパリティ戦略ETFはまたしても顔面着地している。もっとも少なくとも12月月初時点ではシステマティック勢のポジショニングは特段重かったわけではない。リスクパリティが大きな値動きを検知してデレバレッジに動き始めたとしても、そのインパクトは指数で言うとせいぜい1桁前半台のパーセンテージになるだろう。
VIX
 リスクパリティと言えば、不思議なことに今回の調整に際してVIXの上昇幅は極めて限定されている。12月中の50SMAを下に割った2回の調整局面でVIXはそれぞれ35、27までブローアップしたが、今回は辛うじて20に載せた程度である。3ヶ月ものと比べたVIX /VXVも12月の2度の調整ではそれぞれVIXの方が高くなっているが、今回はコンタンゴのままである。一方値動きの方は既に50SMAに到達した。この組合せをどう解釈すべきか。セクターローテーションしたいだけなら指数オプションをいじっても仕方ないのか。12月の2度目の調整では1度目より落ち着いていたVIXの方が正しくその後指数も反発したが、同じ展開を今回も当てはめることができるかどうか。
HYG
 HYGは株よりも弱かった。もっともこれはベース金利上昇に伴う価格下落(利回り上昇)であり、スプレッドで大きくワイドニングしたわけではない。
Nasdaq earnings yield
 従って信用リスクが拡大するようなリスクオフが見られたわけではない。一方株も同じように名目金利と益回りを比べられるので、同じタイプのバリュエーション調整は仕方ない。
NAAIM
 NAAIMは前回押し目買い安全さに繋がった悲観からやや楽観に振れており、VIXの低さを楽観さと解釈するとこの組合せは押し目買いをあまり正当化しない。アノマリーも1月は弱く、押し目買いを急がせるものではない

 テクニカルには、まずナスダックは「15850は依然レジスタンスとして残るものの、小さなヘッドアンドショルダーの完成から日柄も経ってきたためだんだん印象が薄れて来るか」としていたが、年末のリスクオンで15850を簡単にブレイクした。またブレイクしたからと言って上値を追いかける動きは乏しかったため数日間滞在した後に重くなって反落してしまい、以前から取り上げていた14900 -15850レンジを再び端から端まで動いたことになる。S&P 500はナスダックよりだいぶマシなチャートになっているが、持ち合いを上にブレイクしてからレンジ内に戻ってきた形となる。中でも木曜は元々の持ち合い上限にぶつかって日足上ヒゲ陰線で跳ね返った形となっており、そうなると当然次は下を試すという話になってしまい、それを阻止するには4730を上にブレイクしてこの形を否定しないといけない。ナスダックで言うと15200がそれに当たるか。次に週足も上ヒゲ陰線になったため4820もレジスタンスとなる。

 S&P 500はVIXが10台にとどまっている割りには既に50SMAまで調整済であるし、ナスダックも足元のレンジ下限に見えるため、QTネタはセクターローテーションで済んだと判断してこのあたりを押し目と見なすのも可能であるし、現に始まってすらいないのにリアクションだけがQTの影に怯えて先走っている形であるが、テクニカルには上値ではレジスタンスが増えており、またNAAIMとVIXはもう一発のヘッドラインに対してやや脆弱になっている印象を与えてしまう。その上ヘッドラインがなくても米金利が一段と上昇するだけで2021年の2個の天井を完全に塗り替えたとの印象が強くなり神経質さが増しそうなので、値頃感の割りにはあまりオッズがよくない。シーズナリティも味方しない。

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。


この記事は投資行動を推奨するものではありません。