SPX Daily 
 先週のS&P 500は概ね本ブログが想定した通りのレンジ内の推移となった。先週の記事では4220 -4620レンジ、最も狭くて4440 -4620レンジとしていたが、実際には4500で週末引けた後、まず4470まで調整してから恐らくショートカバーで4590まで上昇に転じ、そこで更に反落して4440を突き抜けて4420まで下落した。少なくとも週前半では4440 -4620を想定しておけば指数の値動きは手に取るようだったと思われる。木曜はサプライズで強かったCPIを受けて米長期金利が2%を突破し、それを受けて指数は安寄り後一度は高値回復を試みたものの、概ね前日高値に並んだところで、並ぶ理由はないということで売りが殺到して日足上ヒゲ陰線で引けることになった。それが目印となり金曜は更に続落した。
ED Futures
 金利については金利の記事で「金利カーブの形状がFedの機動余地の狭まりを示唆するならリスクオフを再び誘発しやすいだろう。具体的には2年、3年、5年、10年などメジャーなテナーのどこかで金利カーブがインバートした場合、世界中のどこかでリスクオフ・シグナルとして機械的に捉えられる可能性は要注意である。これはインフレサプライズに対して市場が脆弱であり続けるのと同義である」としていた通り、7年10年がインバートしたことが恐らくネガティブに捉えられたと思われる。同時に利上げスケジュール織り込みが更に前倒しされる一方で2023年年末の再利下げも織り込まれるようになり、全般的にポリシーエラーが再び意識されやすくなった。インターミーティングの緊急利上げも話題になったり否定されたりしているが、それに一喜一憂すること自体がセンチメントの不健全さの証拠である。
GS Real Yield vs SP500 Forward PER
 元より米国債の実質金利がS&P 500のフォワードPERが連動しているのは有名な話である。それは本ブログの実質金利観でもあり、実質金利上昇が株式指数のバリュエーションの上値を抑えるだろうというのは今サイクルの調整が始まった時から述べてきたことである。
JPM EPS and Guidance Reaciton

 でもEPSがそれ以上に伸びていればよいではないかという議論になるが、ここまでバリュエーションが高いとEPSも期待を超えるのも難しくなってくる。決算シーズンで散々体験した通り、滑った企業の許されなさは近年にない厳しさとなっている。先週の記事でも触れたようにガイダンスの弱さは再び目立ってきた。
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 このような背景に基づき、まずBNPパリバが先陣を切ってS&P 500の年末ターゲットを5,100から4,900まで引き下げた。GSも3ヶ月前に引上げた5,100から同様に4,900まで引き下げている。この流れは年末になって当たるかどうかは別として、目先のトレンドとなっている。

 逆にマクロのヘッドラインは悪いニュースばかりがいつまでも続くわけではないし、バッドニュースが金利低下に結び付かないとも限らないのでマクロについてはあまり追いかける価値を感じない。
Barc Retail Investor sentiment
JPM Retail sentiment 
 リテールのセンチメントは傷付いたままである。Barclaysは小口のプット取引が引続き盛況であることを示している。口先でもだんだん弱気なってきたのがJPMのサーベイで分かる。機関投資家のポジションはもっと軽く、企業も淡々と自社株買いを続けるだろう。
NAAIM
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 NAAIMはというと先週に続いて一番底から回復中であり、悲観の極から離れつつある。過熱感はないしショートも正当化しないものの、それだけで押し目買いするほどには総悲観ではないというところである。AAIIはもっと悲観的である。
HYG 
HYG OAS
Bloomberg USIG Yield 
Bloomberg CDS
 HYGは週後半の2日間の弱さが目立つ。これはベース金利上昇にもよるものであるが、スプレッドもHYもIG(図ではCDSで代用しているが)も2月に入って高止まりしている。VIXと同様クレジットも今回は株にかなり遅行したことにより、この辺りの指標を頼りに指数の値動きの方向を当てるのは大変難しかった。HYGはその時より2ポイントも安いのでTINAではないのは間違いないだろう。一方クレジットは先行というよりは遅行しがちなのも事実であり、必ずしも株の方が後からクレジットに寄せられると決まったわけではない。
Mid Election Year SP 500 Seasonality
SPX Seasonality
 シーズナリティ的には中間選挙の年に従うなら2月月末に反発、全ての年の平均では今が強くて月末に下落と相反する傾向を持っているが、今は明らかにあまり強くない。1月は頼りにしてすっかり失敗してしまったが、他に手掛かりもないので今月も19日のオプションエクスパイアまでが弱く、19日底打ちに期待する形となるか。

 テクニカルにはS&P 500は日足の小さなダブルトップが上値を抑える形となった。移動平均を重視するなら50SMAに頭を抑えられたとも、100SMAに頭を抑えられたとも言える。週足は上ヒゲ陰線となった。先週の時点ではまだ明瞭でなかったが4600が明確に分水嶺となる。ここを奪還できればしばらく安心できそうだが、今から4600に向けて買い上げるのはあまりオッズがよくない。ナスダックで言うと14500である。4450近辺に位置する200SMAについては一度目のクラッシュでは「200SMA割れはロスカットしたりショートを入れる水準ではないように見え、むしろ反発狙いの方がオッズがよさそう」としており、実際その後浅傷で逃げられる逃げ場にふさわしい4600まで跳ねたものの、二匹目のドジョウがいるかどうかはかなり微妙なところである。週足的には4200 -4600とヒゲが上下に刺さっているので、万が一のブレイクで切らされるのはアホらしいと考えるとレンジの下半分で十分引き付けて買うか、4600突破を待つかのどちらかということになる。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。