北朝鮮はICBMに続いて水爆実験にも成功し、完全に米中の二大国を翻弄した。ここで、米中ともにろくに動けなくなった理由となっているそれぞれのトラウマについて書いてみようと思う。
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 米軍のトラウマは当然朝鮮戦争である。1950年6月25日に突如始まった北朝鮮軍の南進に対して韓国軍は総崩れとなり、国連による北朝鮮の侵略者認定に伴ってマッカーサー率いる国連軍が介入したものの、北朝鮮軍の練度は高く、一時国連軍は韓国軍と共に釜山を中心とする一角に追い込まれた。その後国連軍が北朝鮮軍の背後である仁川に上陸することにより形勢が逆転し、国連軍は北朝鮮軍を壊滅させた後に開戦前の国境であった38度線を越えて北進したが、ここで中国が同じ東側の北朝鮮を守るために「もし国連軍が38度線を越えたら中国は参戦する」と国連に伝えた。マッカーサーはそれを国務省から伝えられた後も無視して北に進軍を続けたが、果たして中国軍は一気に数十万の部隊を朝鮮半島に投入して国連軍を敗退させ、再びソウルを陥落させた。(予告されていたとはいえ)中国軍の奇襲を前に米軍は10日で200キロと陸軍史上最大の敗走を演じたという。対日戦で無敵というイメージを作ったマッカーサーは判断ミスが目立ち、すぐにトルーマン大統領によって解任されて東京を離れた。

 その後3年間にわたり国連軍は朝鮮半島で中・朝軍と消耗戦を繰り広げ、米軍は5万人近い戦死者を出した。装備で劣っていた中国軍の損害はその数倍に上ると言われる。朝鮮戦争は米軍が史上初めて戦争目的を達成できない形で終わった戦争となり、また山林を踏破して突如四方八方から襲来し、かつて米軍が日本に投下した爆弾の3.7倍にあたる爆弾を地下壕で耐え、防寒装備もないまま時には陣地で部隊ごと凍死しながらも戦意を失わなかった中国陸軍は米軍にトラウマを与えたと言われる。その後ベトナム戦争でも米陸軍が北緯17度線を越えて北ベトナム領内まで北上することはなかった。そして今でも(肝心の中国がとうの昔に北朝鮮支援の意欲を失っているにもかかわらず)常に中国の影に怯えながら北朝鮮と対峙することになる。さらに緒戦における北朝鮮軍の活躍の印象も強烈で、大量破壊兵器の有無にかかわらず米国は北朝鮮軍を明らかに中東の独裁者たちの軍隊とは異質なものとして扱っている。この朝鮮戦争のレガシーが米国が北朝鮮問題で今ひとつ強気に出れない根源である。トランプ大統領は北朝鮮問題について中国に解決の機会を与えたふりをしているが、実は心の底から中国に丸投げしている可能性が高い。だからこそ、中国が任務に失敗しても有耶無耶にされつつある。

  中国から見ると戦死者を多数出したとはいえ、中朝国境から始まった介入が戦争を38線で終わらせたためむしろ戦勝として自信を深め、その後のベトナム戦争でも米軍を威嚇しながら北ベトナムを大っぴらに支援し続けた。中国のトラウマはこの北ベトナムである。(続く)

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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