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 次に世界一読みにくい中国不動産について。極論を言うと、20世紀末から2016年に至るまで中国で不動産バブルが存在したことはない。バブルとはバリュエーション的に正当化できない資産価格を指すが、中国のGDP成長はマックスで北京オリンピック前の14%、減速した後の今でも毎年7%近くある。これが何を意味するかと言うと、たとえ高値掴みしても、住民の所得が毎年7%増えていくので払える家賃もローン返済額も7%増えていき、気づいたら正当化されている。賃貸利回りが低かったのも当然で、将来の住民の所得上昇を織り込んでいたからだ。価格が大きく上昇したものは必ずバブルであり、必ず弾けるというのは停滞した社会でのみ言えることである。

あほらしい局地的バブル

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 中国の住宅価格を見る上で有名な指標は主要70都市の新築住宅価格である。2016年の不動産価格は2011年以降で最も激しい上昇に見舞われた。チャイナショック後の経済を支えるための金融緩和の結果である。特にクレイジーさで話題になったのは「学区房」と呼ばれる、北京の名門小学校付近の住宅である。学区の中で不動産を所有していないと名門小学校に子供を入れられないため、学区内にある住宅は1平方メートルで10万元(165万円)も珍しくないという。坪単価でいうと540万円であり、東京でも匹敵する値段が付くのは港区などのタワーマンションくらいである。100平米の家を買おうものなら、たとえ教育が完璧に成功して子供が清華大学に入学したとしてもその後取り返すのは難しい。ではなぜ買い上げるかというと、教育熱心な富豪の資金が集まりそうだからと言う。高成長社会ならではの中産階級からの脱落への恐怖や、低金利下で人民元現金へのベアセンチメントもあるだろうが、どう考えても正当化できないバブルに見えた。もっとも北京市は素早くバブル潰しに動き、近隣の複数の小中学校から抽選で入学先を決める学区を増やしたため、多くの学区房は足元の半年で1〜2割値下がりしている。

救われた地方

China's Manhattan Sheds Its Ghost Town Image

When Zhang Zhenhua arrived to Tianjin in 2014 to take on a job as a security guard at a luxury apartment complex, he didn't expect to work in a surreal ghost town of vacant office canyons and half-finished high-rises.


 全体像に目を向けると、衰退した地方から脱出した資金が都心不動産を押し上げている日本と異なり、中国では高速鉄道や高速道路の整備の結果、割高になった大都市よりも地方の方がフィーバーした。かつてのゴーストタウンと馬鹿にされた都市も、まるで実は交通の便の改善を先見の明をもって見越して建てられたように見えて来た。振り返ると2016年は中国経済に関する限り、ユーフォリアと言えるほどの完璧なV字回復だったと思える。先進国企業とあまり関係ないネット上のイノベーションやシェアビジネスを置いておくとしても、あれほど過剰投資と叩かれたインフラ整備は流通コストの削減を通して物価を抑える一方で、不動産バブルを活気のなかった地方都市まで浸透させた。地方に集中していた不動産業者の過剰在庫は解消された。むしろ、資産が火を噴く中で大きなバランスシートを維持できなかった不動産業者がランキングを落とした。

魅力が薄れる不動産

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China's property market slows in June as top-tier cities cool- Nikkei Asian Review

BEIJING (Reuters) -- China's home price growth slowed slightly in June as government efforts to keep prices in check weighed on larger cities though smaller cities maintained rapid growth. Compared with a year ago, average new home prices in China's 70 major cities rose 10.2 percent in June, decelerating from May's 10.4 percent gain, according to Reuters calculations based on an official survey out on Tuesday.

 それを見て当局が安心して金融引き締めを始めたのが2017年であり、引き締めは製造業景況感を犠牲にしながらも大都市を中心に不動産価格の抑制に成功したように見える。健全なことに「大都市を中心に」である。また、実体経済が活況なので余剰資金の興味が不動産から実業に吸い出されているように見える。副作用として人民元高も進み、人民元ショックを期待したヘッジファンドは軒並み討ち死にした。

 しかし、どんなに実業が盛り上がっていても、中国の景況感と金融システム、及び先進国の景況感は中国の不動産投資と一蓮托生なはずだ。長期的に人口減少社会への移行が確実視されている中で地方でバブルを起こすと後始末が大変である。実体経済の力強い成長の中で不動産が冷遇されすぎると足元をすくわれるリスクもある。金融環境が慢性的に引き締まる中、中国の不動産投資関連の数字には以前よりも要注意である。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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