世界中が注目する次期Fed議長人選で、テイラールールを提唱したことで有名なテイラー教授がトランプとの面接で好印象を残したという話から、テイラーリスクが浮上している。
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 テイラールールとは、インフレやGDPから機械的に政策金利を定めるやり方であり、上の図はWikipediaの説明。東洋経済は「政策金利=2+0.5×GDPギャップ+0.5×インフレギャップ」と解説する。この概念は急に浮かび上がったものではなく、元よりFedの金融政策を語る上で外せないものであり、また議会共和党の一部で根強い人気がある。
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 このショッキングな絵が示すように、テイラールールは現在の1.0 -1.25の政策金利よりも遥かに高い3.74%の政策金利を示唆する。ルールに現在最も低い指標であるインフレだけでなくGDPが入っているからである。従ってもしテイラー教授がFed議長になった場合はかなりタカ派な金融政策に転換するのではないかと債券投資家に恐れられている。


Don't Fear the Taylor (Rule) Fed; It May Not Look Much Different

John Taylor's monetary policy rule says the Federal Reserve should have interest rates three times as high as they are at the moment. But even if President Donald Trump picks the Stanford professor as the next chairman of the U.S. central bank, they probably won't get there any time soon.

 Bloombergの記事はテイラールールを恐れる必要がないと説く。テイラー教授がいきなり議長になったとしても他のメンバーを説得できないため、またインフレ率を一定に保つ「自然利子率」の居場所も教授が当初示した2%ではなくさらに低いのではないかという議論があり、一義的に決まらないからである。

 個人的には、上の議論以前にそもそもテイラー教授が議長になる可能性はそこまで高くないと見るし、Bloombergの記事通り、たとえ本人が議長になったとしてもテイラールールを適用し出すとは考えにくいと思う。バーナンキ議長も実際に大恐慌に出会ってもケチャップを買ったわけではない。債券投資家にとっては、テイラーリスクは人選そのものよりも、政策金利も長期金利も今の米国の(物価以外の)諸指標対比で低すぎるという直感的な恐怖から来るものではないか。

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 株式の投資家にとっても、ルールベースの金融政策運営はパラダイムシフトである。均衡実質金利(自然利子率)が何%であろうと、またテイラールールに限らず、全てのルールベースの金融政策運営は柔軟性を失うことによりいわゆるグリーンスパン・プットを消滅させる。今までは株価が大きく下落し、また景況感が悪化すると、どうせ次の利上げが遅れる、或いは利下げが行われるという期待がわき上がり、金利が低下して(タームプレミアムが低下して)株価を下支えした。米国雇用統計が悪いと米株が上昇した時代を覚えている参加者も多いだろう。インフレとGDPというどちらも遅行気味の指標をベンチマークにすると金融政策の機動性は低下し、金利はセンチメントよりも経済指標により影響されるようになり、株が下がっても金利低下というクッションが取り除かれるかもしれない。長期的には「金利が上がるからドル円や銀行株が上がる」という反応はナイーブすぎる可能性がある。 

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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