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 懐疑の目で見られていたトランプ大統領の税制改革がついに成立しそうだ。これは世界の経済政策が金融緩和競争から財政競争にシフトすることを象徴している。
    2010年代前半の金融緩和競争、通貨安競争はリーマンショックで経済が傷んだ先進国による新興国からの雇用奪取戦略だった。金融緩和は生産力と整備されたインフラがあり、インフレ耐性を持っている国々の特権である。インフレ耐性がない新興国は先進国お同じような金融緩和ができず、通貨高による雇用空洞化に戦々恐々しなければならなかった。日本は民主党政権の間は円安政策を許されなかったが、米国が通貨安競争からの撤退を決めるとアベノミクスで強大な生産力に裏付けられたインフレ耐性を遺憾なく発揮した。中国は通貨高に取り残されかけたが、2014年後半には自身のインフレ耐性に自信を付け、金融緩和と通貨切下げを敢行して先進国に泡を吹かせた。結局、通貨安競争はインフレ耐性を持った日本の一人勝ち、他は概ね引き分けという結果で終わった。

    金融から財政へ、という掛け声が数年間続いた後、トランプ大統領の下で米国は金融緩和競争の次に世界に対して減税競争を仕掛けた。減税は健全な財政を持った国の特権である。金融緩和競争ではインフレ耐性がないと通貨高で工場の海外移転(先進国への回帰)を招くが、減税競争では財政が弱い国は米国に付いていけず、企業の海外移転を招く。金融緩和競争に比べて、減税競争では財政が悪い日本はやや不利な立ち位置となる。現にあっという間に法人実効税率で抜かれてしまった。もっとも日本政府は危機感を持っており、早速法人税減税を検討している。にわかに生産性革命が唱えられるようになったのも、通貨安競争(不況で余った労働力の安売り競争)局面が終わったとの認識に基づいていると思われる。しかし、日本の場合は減税するにしても常に何らかの増税とセットでやらないといけないため、国民の負担は強まる一方と思われる。

   そして再び中国である。採算が取れないインフラ整備はインフレ耐性が国益にとって重要なら無意味ではないが、財政の健全度が試される局面では許容されない。中国が減税と共にインフラ整備を止めて放漫財政から決別するなら、中国のインフラ整備を起爆剤とする今回のグローバル好景気は、減税景気への転換をスムーズにできるかどうかが試されるようになる。減税を決断せず、有形無形の税金を徴収しながら採算の取れないインフラ整備に突っ込み続けるなら産業空洞化でこれまた様々な不均衡が噴出するだろう。金融緩和競争による好景気は蓄積した不均衡をチャイナショックという形で爆発させ、次のITの発展と減税による好景気にバトンを渡すまでに一時危うかったが、減税競争はどうだろうか。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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