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 GPIFが国民年金積立金を運用するのに際し、信託銀行に預けている円預金にかかるマイナス金利を徴収されることになりそうだ。この話は端的に言えば「マイナス金利政策のせいで、国民の資産である国民年金積立金から日銀に毎年0.1%(数十億円)の利子を支払うことになる」というものだ。間にはさまっている信託銀行はただの土管であり、当然誰かに代わってマイナス金利を補填すべき立場にないため議論の主体になるべきではない。

GPIF、預金にかかるマイナス金利分を負担

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。運用難でGPIFの預金(短期資産)は10兆円以上に膨らみ、信

 「年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はすでに出てきている。ただ、運用資産が156兆円にのぼるGPIFは信託銀からの負担要請を突っぱねていた」とあるように、今まで機関投資家を含めた他の預金主体からはマイナス金利を徴収していたのにGPIFに対してだけ免除していたのだから、そういう経営判断かもしれないが、基本的に解消されるべき官民間の不公平であった。

 今後について考えると、マイナス金利を負担していない預金主体はもう一つある。GPIFですらマイナス金利を負担しているのだから、個人預金者のみがゼロ金利を享受できるのは不当ではないか、という議論になる可能性がある。個人預金からもマイナス金利が徴収されるようになれば銀行収益にとって大きくポジティブになる。そして個人預金のマイナス金利徴収への批判はマイナス金利政策への批判にも直結するだろう。

 本ブログは一貫して「マイナス金利は借り手の利益、貸し手の損失になるため、非常に大雑把にいうと財務省が得し、預金主体である国民や銀行が損する。つまり増税に他ならない」 と主張してきた。今までは銀行が痛みに耐えて預金からのマイナス金利徴収を自粛してきたおかげでマイナス金利政策の徴税感はあまり見えてこなかったが、ようやく年金という切り口を通して国民全体にも体感して頂けるようになってきたと思う。