続いて10日に中国政府関係者の発言として「中国が米国債投資を縮小、もしくは一時停止する」というヘッドラインがBloombergから流れ、米国債とドル円が同時に急落した。米金利は気づいたら2.6に近づいている。また、普段連動するはずの米金利とドル円の相関が見事に壊れ、すでに虚を衝かれてフラついているドル円に止めを刺した。

US10 vs JPY
 
 米国債購入停止と言えば本邦某元総理の「大量の米国債を売却する誘惑にかられたことが幾度かある」という覇気あふれる発言を思い出すが、記事を読むとごくごくテクニカルな話が書いてある。定期的な投資評価の中で「米国債は他のアセットクラスと比べてより魅力が下がっている」という評価になったこと、および「米国との貿易問題」が理由となっている。出所は「詳しい人によると」となっているが、匿名だし「購入停止の提案」が採用されたかどうかもわからない。
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china reserve
 筆者がこの記事で最も驚いたのは、むしろ中国政府による米国債保有額がチャイナショック前の2014年に匹敵する水準まで回復していたことだ。外貨準備そのものは2014年のピークの8割程度までしか回復していないにもかかわらず、である。2016年の介入のための取り崩しで減らした後、2017年の外貨準備増加分の約200 billion USDはほぼ全額米国債に投資されている計算となる。"The market for U.S. government bonds is becoming less attractive relative to other assets, and trade tensions with the U.S. may provide a reason to slow or stop buying American debt"の"stop buying"が純増の停止を意味するのであれば全くリーズナブルである。

 問題は、魅力が下がっていると言っても、他に投資すべき先として何を想定しているのだろうか。リスク資産か金かインフラか。それとも「原資の外貨準備を増加させない」という意味だろうか。もう一つの「貿易問題」という理由も、「貿易戦争になるから買ってあげない」というよりも、「人民元売りドル買い介入、及びその結果としての外貨準備増加・米国債購入をストップする」という解釈の方がしっくり来る。するとただのドル安人民元高容認であり、世界の終わりでもなんでもない。

 本ブログでは今年の懸念材料として中国を言い続けていたが、新年早々為替問題で暴れるとは思わなかった。いずれにしてもこの発言により、日銀のオペ減額から始まった米国債とドル円の相関の崩壊が加速した。かき回しが終わったところでリスク資産押し目買いのチャンスが来るか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。