2y vs div
3mTBill vs div
 米国の短期金利が上昇を続けてきた中で、2017年年末頃に短期金利の代表的指標である2年金利がS&P 500企業の株式配当利回りを上回った。この関係性をロバート・シラー教授ジェレミー・シーゲル教授や有名ファンドマネージャーのジェフリー・ガントラックなど錚々たるメンバーが重視しており、米株はバブルであり、短期国債(や現金)の方が投資先として魅力的ではないかという議論が展開されてきた。最近では配当利回りが3ヶ月TBillの利回りをすら下回ってきたということで再び盛り上がっている。

 確かに直感的には、「無リスク資産である短期国債の収益利回りよりもリスク資産の収益利回りの方が大低いなら、なぜわざわざリスク資産を買うのだろう」と考えるのが自然だ。すると米株は高すぎる(=配当利回りが低すぎる)のか。

 目新しい主張を目にし、参考にすべきかどうか迷った時にまずすべきは検証だ。「短期金利が配当利回りを上回ってきた」系の記事が示すチャートの大半は謀ったようにリーマンショック後の超低金利期間しか描いていない。その前はどうだっただろうか。
2 year vs Div
 データ取得はブロガーに任せよう1990年以来の大半の期間にわたり、S&P 500の配当利回りは2年金利よりも低かった。2年金利の方が低かったのはせいぜい2008年から始まったグローバル金融緩和期間の現象にすぎない。
SP-500-Dividend-Yield-vs.-10-Year-Treasury-Yield
 さらにさかのぼってみると、1954年以降の10年金利とS&P 500の配当利回りの比較も出てきた。ほとんどの期間にわたり、S&P 500の配当利回りよりも10年金利の方が高かった。なぜ人々は債券よりも利回りが低い株を買うのだろうか。
US Core CPI
 一つにはインフレ耐性である。インフレになった場合、国債は元本でしか返ってこないが、株式を通して保有する企業の資産や収益はインフレに伴って値上がりする。従って真面目に比べるなら短期国債の実質金利と株式の配当利回りを比較すべきだ。米国のコアCPIが2.1%であることを考えると2年実質金利は高々0.5%あるかないかだ。配当据え置きのままS&P 500が今の4倍にあたる1万ドルになったらバブルと考えて良いだろう。

 もう一つは企業の自社株買いだ。米国企業の特徴として株主還元の一部は自社株買いによってなされる。バロンズは今年S&P 500所属企業が6500億ドルの自社株買いをするだろうと予測している。S&P 500の時価総額が23兆ドル程度であることを考えると3%近くの株式が企業に買い戻された形となり、理論的に1株あたり利益を3%押し上げる。自社株買いと配当を加えた総株主還元利回りは5%近くになる

    もちろん、これは高金利が株式に対して全く悪影響を与えないという話ではない。他の条件が変わらないとして名目金利だけでも上がると投資家の要求利回りが上がるのは間違いない。特に「利回りの厚い債券」のように考えられてきた、成長ストーリーは今ひとつだが厚い配当が期待されている銘柄ではその傾向が強くなるだろう。金利上昇で資金調達コストが上昇すると長期的には自社株買いする体力が落ちるだろう。そして教授たちの主張とルートを異とするものの、名目金利の上昇が春にVIXショックを引き起こしたのを我々は経験した。ただいずれにしても、短期金利が配当利回りを超えてきたから株を買うのが非合理的でありバブルがクラッシュする、という主張は論理的ではない。

この記事は投資行動を推奨するものではありません。



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