Spain Parliament
 欧州国債の投資家がイタリアの政局で振り回されている横でスペインも政権交代となった。スペインでは2011年以来ラホイ政権が続いていたが、2015年12月の総選挙の後、イタリアと同様に国会で過半数を維持できる政党が出なかったため2016年の大半は無政府状態で過ごした。2016年11月にようやく少数与党国民党(PP)によるラホイ政権が復活したが、その後2017年にはカタルーニャ州の独立騒ぎがあり、それが一段落したと思ったら国民党の公共事業をめぐる古典的な腐敗問題が再び持ち上がり、元々少数政権だったラホイ政権は(僅差ではあったものの)あっさり不信任されてしまった。1977年のスペイン民主化以来初の不信任決議による首相辞任となる。

 可決された不信任案には新首相候補を記され、次期首相は最大野党・スペイン社会労働党(PSOE)のサンチェス書記長が就任することが決まっている。本ブログではカタルーニャ独立問題の記事の最後で「(カタルーニャ独立運動そのものよりも)ラホイ内閣の不安定化がスペイン政治の最大なリスクである」としていたが、半年の時を経て具現化したわけだ。もっとも社会労働党も今の国会で過半数を占めているわけではないので、大胆な政策変更はできなさそうだし、近いうちにまた総選挙ということもあり得る。
Spain GDP
Italy GDP Growth
 ただ、その場合もイタリアほどのマグニチュードはないだろう。スペインの特徴は景気の良さである。GDP成長を見ると近年は年率3%台を維持し、ユーロ圏平均よりも高い。これはイタリアと違ってさっさと銀行の不良債権問題を処理できたのが背景である。またこの結果、EUとの関係は良好であり、今回与党になった社会労働党にしろ、総選挙になった場合に躍進すると言われている新興のシウダダノス党にしろ、特にEU離脱といった主張をしていない。EU懐疑派政党のポデモスはそこそこの議席を確保しているものの、支持率は横ばいだ。イタリアが低成長→ポピュリズム躍進の悪循環から抜け出すのと同じくらい、スペインが高成長→ポピュリズム低調という好循環から転落するのは難しいだろう。

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