中国の経済指標は信頼できない、と主張することが一種のポリティカル・コレクトネスになりつつあり、経済指標は正しいと公の場で主張することは極めて難しい。チャイナショックの頃から全世界の金融機関が「嘘っぱちである公式指標よりも中国景気の真実をよく表している」モデルを構築しようと血眼になってきたが、結局どれも公式指標以上の信頼性を獲得するのに失敗してきた。
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 元祖・真実のGDP指標は「鉄道貨物輸送量、電力消費量、銀行融資」からなる李克強指数である。こちらは2015年には0近辺まで落ち込んだため、「鉄道貨物輸送量がマイナス成長しているのにGDPが6%も伸びるわけがない、真実のGDPは0%近辺であるに違いない」という使われ方をされてきたが、2016年末には公式GDP成長率よりも遥かに高くなってしまったため、用済みとなったまさか「中国の公式GDPは過小に捏造されており、本当は二桁成長である」と言うわけにはいかないだろう。なお、本ブログは忠実にも李克強指数を重厚長大産業の景況感の指標として利用し続けており、李克強指数で画像検索すると割りとすぐ本ブログに辿り着ける。
SMI
 次のチャレンジャーはSpaceKnow社が開発したSatellite Manufacturing Index (SMI)である。こちらは中国全土の6000を超える工場地帯の22億枚以上の衛星写真を分析し、その活動状態によって製造業の景況感を求めるものである。こちらは中国の公式製造業PMIと、特に財新製造業PMIとよく一致した傾向を見せている。しかし、目を凝らしてみると、1-2ヶ月ほどPMIに遅行している。PMIの信頼性を補強する材料を提供してくれるのはありがたいが、これではPMIだけ見れば十分ではないか。 
CIPPS
 もう少し面白そうなのは国際公共政策研究センターという舌を噛みそうな名前のシンクタンクの「中国写真機プロジェクト」である。こちらは会員企業の現地拠点(約60箇所)からの月次アンケート結果を指数化したものである。このチャートをみてすぐに思い浮かぶのは中国PPI(中段)である。PPIにはない2013年の山があるので、財新PMI(下段)も加えてみると確かにそれっぽい。PPIとPMIをなんとなく混合したような景況感である。何よりも、2014年からチャイナショックの半年ほど前の大底に向かって低下し、その後はチャイナショックに目もくれず回復していった先行指標ではないか。これにはポテンシャルを感じる。やはり商人の目が一番確か、ということだろうか。こちらのCIPPS指数は、2017年新年を境に緩やかに低下に転じている。本ブログが何度も取り上げてきた金融・財政引き締めのストレスが現れているのだろうか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。