
中国の固定資産投資の落ち込みが話題を呼んでいる一方、不動産投資の堅調さが目立っている。チャイナショックにかけて大きく落ち込んで来た不動産投資は2016年から回復しつつある。中国景気を支える柱が政府のインフラ投資から民間の不動産開発に移って来たのだろうか。

図は中国の国家統計局が毎月発表している不動産投資成長率(緑)と不動産企業による土地取得面積成長率(青)を気合いで4年間繋げたものである。不動産投資成長率はFTのチャートの後半4年間に当たる年初来累積の前年比という集計方法なのでチャートとしては非常に見づらく、12月から1月に変わった瞬間に比較対象が変わるため数字もガラッと変わりやすい。従ってブロック状に描き出した毎年の雰囲気と、年始年末以外の期間のトレンドだけが頼りとなる。企業による土地取得では代金を1年以内の分割払いにでき、不動産投資への計上は払込時に計算するため、土地取得面積は不動産投資と比べてやや先行指標になると言われる。また、当たり前ながらまず土地を取得してから物件を建てる。他の期間は先行性がそこまでわかりやすくないが、チャイナショックがあった2015年の不動産投資の落ち込みモメンタムに先立ち、2014年の住宅価格下落を受けて2014年年末に土地取得面積が横ばいから-15%程度と大幅なマイナスに転じている。
足元でも、土地取得面積は2018年1月に+16%から-1%までガクッと落ちている。ただ、-17%のうち、比較対象が2016年年末から2017年年初に向けて10%上がったのに由来する分が-10%ある。それを除くと「2018年はそれなりに低調」ということになるだろう。一方不動産投資の方は2018年に入ってからも堅調であるが、これは昨年の堅調だった土地取得が尾を引いているようだ。とすると、2018年後半から2019年にかけての不動産投資は盛り下がってくるか。
では、再び不動産投資の減少に伴い重厚長大産業にチャイナショックがやってくるかというと、不動産を巡るファンダメンタルズは2014年当時より遥かに改善している。中国政府はデレバレッジのために「ローン規制」と「購入規制」の双方で需要の押さえ込みを図っている。不動産企業のファンディングも一部の勝ち組を除いて厳しくなっている。それを見越した不動産企業は2018年の土地取得を減速させ、同時に2017年に既に取得した土地をさっさと開発して売り切ろうとしている。実際、最大手不動産企業カントリーガーデン(Country Garden, 碧桂園)の経営陣は「土地購入から販売まで7ヶ月間で回転させられなかったマネージャーを首にする」と発破をかけている。この突貫工事のための需要が前回の記事で取り上げた「鉱工業生産、PPI、建材、建機の堅調さ」に繋がっているのではないか。そうすると突貫工事が終わった後は再び慢性的な設備過剰デフレに悩まされる可能性はないだろうか。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。