China retail sales
 本ブログはとかく重厚長大産業ウォッチに偏りがちだが、今回は中国の消費の衰退を取り上げてみようと思う。チャイナショックの時は中国の重厚長大産業は大きく減速したが、その減速をカバーしたのが10%増をキープした個人消費だった。当時はその堅調さゆえにデータの信憑性に疑問さえ持たれたが、その後恐るべき購買力がチャイナショックをものともせず、本邦にもインバウンド消費として溢れ出たのは記憶に新しい。ところが、2018年になって小売売上高の減速が目立っている
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 これを補強するように自動車売上げも減速している。直近のマイナス転は7/1からの自動車輸入関税引下げを待っていたためと思われるが、基本的にトレンドとして2017年後半からイケてない。 
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 消費が落ち込むとすればまず思い付くのは可処分所得の減少だが、中金公司のレポートによると一人当たりの可処分所得の伸び率(茶色)はチャイナショック以降概ね横ばいである。GDPの伸びが横ばいだから当たり前だ。それに対して、今までほぼ似たような伸び方をしていた一人当たり消費(土色)が2016年半ばの不動産バブル以降、ワニ口のように下方乖離している。
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 所得を消費に使わず貯め込むようになった理由は不動産支出の圧迫と言われる。現政権は企業、金融機関、地方政府のレバレッジ潰しに躍起になっているが、一方で(クラッシュさせたくないなら誰かにレバレッジを移転するしかないわけだが)家計の負債(土色)が積み上がりつつあり、家計の総所得(茶色)に追い付きつつある。前者がストックで後者がフローなのでたとえ追い付いても何か変わるわけではないが、とにかく積み上がる負債が家計を圧迫しつつあるのは間違いないだろう。

 不動産市況が個人消費に影響を与えるルートはいくつか考えられる。家を買う時は家具などをも合わせて購入する。持ち家が値上がりすれば資産効果から消費が増える余地がある。一方、住宅ローンが増えて返済額が膨らんだり、まだ買えていない住宅が値上がりしていれば消費を切り詰めなければならない。今は政府の規制と引き締めにより不動産投資と住宅供給が細りつつあり、高騰したところで高いローンを組んでようやく買えた、もしくは買えていない人の消費は圧迫される。一方、苛烈な引き締めと取引規制により、買った人も含み益に安心できないので資産効果からの消費は限られる。チャイナショックでも萎まなかった中国人の購買力を、2016年以降の不動産バブルが蝕みつつあるわけだ。
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 もとより中国景気は消費によって決定づけられるわけではないので、消費が落ち込んでも直ちに波及効果があるわけではない。ただ、中国国内の消費が減っているのに元安が加わると、インバウンド消費も少なくとも一時的には停滞する可能性がある。GDPが上がって所得が増えるから消費も一直線に伸びるに決まっている、と油断していると足元をすくわれる可能性がある。あれほど持てはやされていたオンラインショッピング(土色)ですら、一直線で伸びているわけではない。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。