人民元の下落が加速している。ピッチとしてはすでにチャイナショックの時の切り下げを上回っているようだ。当局は依然放任スタンスを取っているが、「人民元の制御された墜落」で取り上げた時に比べても市場で幾分かパニック度が増している。
平穏としていたCNY/CNH(人民元のオンショア・オフショアスプレッド)は6月後半から淡々と上昇。海外勢がより弱気な見方をしていることを示す。もっとも、当局がオンショア人民元の下落をも放置しているため、USD/CNYの値動きの割には極端に広がっているわけではない。
人民元の1ヶ月ものオプションボラティリティはやや上昇。
トランプ政権は中国からの輸入に対して10%の関税をかけるとしているが、既に春から9%近く人民元が対ドルで下落しているため、もう少しで関税の意味がなくなってしまう。 前回の記事では
「足元の人民元の下落は金利差に従ったものであり、チャイナショックのようにパニックが伴っているわけではない。また中国当局もどうやら人民元相場に放任スタンスを取っているようなので、政策変更による急激なショックもなさそうだ。ただ、ショックが来なくても人民元の下落そのものはグローバルでデフレ要因となり得る。また貿易戦争(または譲歩)の結果として経常黒字が減少すれば加速する可能性もあるだろう。人民元安には強力な輸出振興効果があるはずだが、トランプ政権は貿易を問題視し、関税を振りかざしている割には無関心のようだ」
としていたが、これまではパニックがなかったことから日米の資産価格にはほとんどインパクトがなかった。金利差に従った値動きを当局が放任しているわけだから下落が続くのも自然である。もっとも人民元インデックスはUSD/CNYの半分しか動いていないため、半分は米ドル高のせいである。「貿易を問題視していた割には無関心だった」トランプ政権は昨夜ようやくドル高の弊害についてコメントしているが、このトレンドを食い止めることができるだろうか。
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