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 5月以降金融緩和に方向転換した中国人民銀行が、財政の不作為に対してインターネット上に不満をぶちまけている。人民銀行研究局局長・徐忠は7/3にネット上で論文を発表して中国財政部を批判した。

 論文の主張はまとめると三つ。一つ目は実効性のある減税。曰く、ここ数年で財政部は減税政策を打ち出してきたものの、税引き前利益を上げている国有企業にしか恩恵が行き届いておらず(この批判は本邦でも馴染み深い)、ここ2年の歳入の伸び(2017年で+7.4%)はGDPの伸びをも上回る。所得税徴収の下限年収を現在の3500元から5000元以上に引き上げる議論に御用学者が猛反対し、その理由として市民の納税者意識を育てるというものが挙げられたそうだが、論文は「その割りには財政は不透明であり、市民の監視と監督を受けようとする意識が乏しい」「財務諸表は全人代の議員だけでなく私が読んでもよく分からない」と嫌味をぶちまけた(それは政治体制のせいだよと言ってはいけない)。

 二つ目は地方政府の債務問題の解決と財政赤字の拡大。金融機関が政府の指導通りにクレジットを引き締めている中、その副作用を緩和するために財政政策は積極的であるべきなのに、財政部が定めた2018年財政赤字率目標は前年の3.0%から2.6%へと、より緊縮的となっている。財源を絞られた地方財政も引締められるに決まっているのだから、横ばいの3.0%でも緊縮的なくらいである。財政赤字の拡大もないのに「積極的な財政政策」を言い張るのは詐欺である。
Fiscal dificit vs gdp
(確かに3%でも2.6%でも、緊縮マニアのEUコア国を除く先進国と比べても十分緊縮的だ。日本は5%程度である。「この他に地方政府が債務に依存した財政赤字を垂れ流している」のはその通りだが、それは中央政府からの財政移転が足りない結果にすぎないかもしれない。なおこの財政引締めが今年の固定資産投資等々の落ち込みの犯人であると思う)

 地方政府及びその融資プラットフォーム企業の債務は政府部門の債務でもあり、債務問題は財政問題でもあり、中央政府が地方政府の債務削減目標を民間金融機関に丸投げするのは無責任である。地方政府の会計の透明性が低く、また地方政府の破産制度も整っていないため金融機関に正しいリスクプレミアムのプライシングができるはずがない。

 三つ目は民間金融機関をデレバレッジの陣頭に押し立てるなら、その結果としての民間金融機関の資本不足は政府の公的資金注入によって解決すべき(これは新しい話ではない)。
PBOC BS
 中央銀行が債権者としての立場を利用して政府に緊縮を求めるのは、一部から激しく批判されているが本邦をはじめとする先進国では珍しくない。それに対して中国人民銀行はバランスシートの2/3が外貨準備で出来ており、政府への債権が誤差のような額だからか、むしろ政府に財政拡大を求めている。政府と中銀でアコードを結んでいる本邦当局などと比べて遥かに殺伐としているが、よくも悪くも自分たちのポジションを気にせずに本来のマンデートに集中できるというわけだ。また、今回はたまたま中央銀行が陣頭に立っているが、景気後退に伴い中国政府への財政拡大圧力が高まりつつあることは間違いない。中国共産党の一党独裁の正統性が経済成長にかかっていることを忘れてはならない。口でどう言おうと、人為的に経済成長を劇的に引き下げに行くのは政争で経済どころじゃなくなった時か、(物価など)他の要因との兼ね合いで本当に詰んだ時に限られる。

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