China reserve
 人民元の下落が止まらない中、8/7に発表された中国の外貨準備は前月に続いて微増となった。ドル全面高が続いたことから実態としてはもう少し増えているようにすら見える。まさか当局が人民元売り介入をしているとは思えないが、とにかく資金流出はあっても大規模ではなく、また当局がドル売り人民元買いの実弾介入をほとんど行なっていないことがわかる。
 一方、中国人民銀行(PBOC)は8/3に為替フォワード取引について銀行に20%の準備金保有を義務付ける規制を再開した。この準備金要求(Reserve Requirement)は商業銀行が顧客のためにドル買い人民元売りフォワード(及び為替スワップ、オプション)のポジションを立てる時に額面の20%をドルでPBOCに準備金として積み立てることを要求している。この20%に対して金利は払われないため、ドル金利が2%だとして年率40bp程度のコストの上積みとなる。要するに取引税である。PBOCは2015年のチャイナショック後の8月末に同じ施策をアナウンスして10月に本土系銀行に対して始めたことがあり、その後2016年7月に外資系銀行にも拡張し、そして人民元相場の落ち着きを受けて2017年9月に撤廃していた。PBOCはこの準備金要求は「資本規制とは関係ない、人民元為替ボラティリティの高まりを受けた金融リスクを回避するための規制」としているが余計なお世話である。
CNY_PBOC_DXY
 悪態は置いておくとして、スポット市場でドル現金をばら撒くのと比べて、このフォワード市場を凍結させる施策が遥かに資本効率が良いのは事実である。2015年のアナウンス後に人民元市場がどう推移したかというと数週間にわたって人民元高局面が続いた。もっとも長期的にトレンドを転換させるには至らず、その後人民元は再び対ドルで下落に転じた今回も同じような展開が見られるのではなかろうか

 更はPBOCは本日、商業銀行との会合で「我々は為替市場を安定させる様々な手段を持っている」とし、「群集行動に出たりモメンタムを追いかけない」よう求めた。窓口指導QEと同じく、実弾介入を行わずにあくまでも商業銀行に火中の栗を拾わせるというスタンスは変わっていない。2015年の教訓もあって、外貨準備には断固として手を付けないという方針を持っているように見える。あまりにも外貨準備が温存されているため、或いはいわゆるキャピタルフライトは案外起きていないのかもしれない。2015年から2016年にかけては人民がドル換金に殺到して外貨準備を奪って行ったが、その後「そのお金でマンションを買っておけばよかった」と後悔した人は多かったはずだ。また値上がりしたマンションをジャンピングキャッチした組はもう流出させるような人民元預金すら持っていないかもしれない。いずれにしても、2015年のチャイナショックに比べて盛り上がりに欠ける。
CNYCNH
 USD/CNYとCNY/CNH。当局が下落に逆らって基準値(Fixing)を高く設定していないため、CNY/CNHは依然1を中心としたボックス相場である。

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