China retail sale
 減速を続ける中国の諸指標の中で小売売上高が粘っている。もちろん大きなトレンドとしては一貫して増加幅が低下しており、特に2017年に入ってから低下が加速しているが、足元はやや踏みとどまっているように見えなくもない。固定資産投資などが落ち込む中、中国経済が「消費依存を強めている」と主張することができそうだが、思えば内需の不足を補うための固定資産投資だったので、それ自体は健全な動きである。国家発展改革委員会によると、消費のGDP成長への貢献度は2015年49%、2016年60%、2017年65%と高まり続けている。

小売売上高の内訳

china retail sales
 内訳を見ると、1割強を占める「自動車」はマイナス成長。電化製品と通信機器も平均以下である。代わりに伸びたのは値上げが続いている石油製品であり、これは消費センチメントとは関係ない。外食も10%成長をキープしている。本ブログの中国小売売上高への見方は、高騰する不動産支出により圧迫されるとした前回の記事から変わっていない。よく外食を増やす気になるなと感心するばかりである。GDPもそうだが、セクターごとの模様が激しく変動しているのに「上手い具合に互いに打ち消し合って全体として安定している」指標は見飽きた。以下に各セクターの他のソースから雰囲気を探ってみた。

自動車

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 金融引締めでオートローンが借りづらくなっている。また、7/1より始まった自動車関税引き下げの影響を見極めようとする動きがあったが、8月になると米国車の関税が逆に引き上げられるなど混乱が続いている。

スマートフォン

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 本土系メーカーの競争ばかりが報道されがちな中国スマートフォン市場だが、全体的にも落ち込んでいる。ただ小売売上高の「通信機材」は平均以下とはいえ6.4%成長しているようなので、スマートフォン以外の通信機材が売れているのだろう(有線電話?ポケベル?ファックス?)。また通信機材セクターの全体への寄与も自動車、外食の1/10と大きくない。

オンラインショッピング

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 オンラインショッピング売上高の増加は続いているが、月を追うごとに前年比増加幅が低下している。

消費の格下げ

 NYTimesが「アボカド、カクテルと子供を諦める」という副題で中国のConsumption Downgradeについて書いている。要するに節約である。住宅ローンや教育コストによって家計を圧迫された人民はアボカド、カクテルのような不要不急の贅沢品を諦めている。シェアバイクはタクシーの代替手段である。北京の住宅ローンと上海の家賃で家計の2/3が消えてしまい子供を諦めたパワーカップル。無理をして住宅を買ったは良いものの結局ローンを返せず、毎月2万円を捻出するために賃貸に出してシェアハウスを借り、結婚もデートも諦めた深圳の半導体エンジニア。もっとも富裕層の多い大都市での背伸びが難しいのは万国共通であり、社会全体の縮図として捉えるには話半分に聞く必要がある。いずれにしろ、流行っているのはメルカリに当たる安物オンラインショップPinduoduo、ストロングゼロの先祖に当たるErguotou、ザーサイ(Pickled vegetables)、そしてユニクロである。
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 ザーサイを生産する涪陵榨菜(002507.SZ)は上場している深センの株式指数(オレンジチャート)を大きくアウトパフォームしている。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。