夏に話題になった中国のQEと金利低下だが、その後はインフレ期待が戻ってきたため、金利がやや反発している。ただでさえ龍頭蛇尾感がある窓口指導QEだが、止んでしまう可能性はないだろうか。
CPIと食品
中国のCPIは何年にもわたって2%を中心に安定しているが、足元では小さいながらも上昇トレンドに入っている。背景は主に天候不順と豚コレラによる食品の価格上昇である。
中国のCPIバスケットは5年ごとに改訂されているが、内訳は厳密は非公開である。しかし各セクターの物価変動は公表されているので、エコノミスト達はそれらと公表されているCPI変動を元にラグランジュ法でバスケットウェイトを逆算するという無駄な作業を強いられているそうだ。
中国建設銀行の推定によると内訳は
食品酒タバコ 29%
衣類 8.5%
消費財 4.7%
ヘルスケア 10.3%
交通と通信 10.5%
教育と娯楽 14%
居住 20%
その他 2.2%
消費財 4.7%
ヘルスケア 10.3%
交通と通信 10.5%
教育と娯楽 14%
居住 20%
その他 2.2%
であるそうだ。食品のウェイトが大きいのが特徴で、その中でも豚肉の割合が大きく、CPI全体の3%を占めているという。実際、中国の豚肉生産と消費量は凄まじく、世界の半分を占めている。
豚コレラ
その豚はと言うと、中国の複数の省で豚コレラ(ASF)が蔓延しているのは既にニュースになっている。これが豚の処分などを通してCPIを更に持ち上げるのではないかという心配もあるだろう。元々中国の豚は農家が小規模に養殖していることが多く、生産量の調整が難しいため定期的に暴騰と暴落を繰り返してきた(Pig cycle, Pork cycle)。ところが近年になって食の安全問題もあって中国政府が豚養殖業の大企業への集中を誘導してきたため、2018年夏まで豚肉価格は長い下落トレンドに入っており、足元は2016年のピークに比べて2割以上安い。中国企業は養豚技術を学ぶために米スミスフィールド・フーズを既に買収している。今後も豚コレラの拡散速度に注目であるが、基本的に豚肉価格は大資本パワーで多少のショックへの耐性を持っているように見える。
その他の要素
PPIの方は低位安定しており、CPI上昇要因にはならなそうだ。前回の記事で記したように消費でも節約が広まっているとすると、豚肉と家賃の両輪でCPIを持ち上げることができるかどうか、というところだろう。後者は以前の記事でも取り上げたがあくまでも局地的な上昇であるし、あまりにも急激な家賃締め上げは政治問題に発展し得るので政府の介入が入る可能性もある。ここまで特定分野に偏っていると果たしてCPIを見て金融政策を動かすのが妥当かどうかすら怪しくなってくるが、いずれにしてもCPIは高めの安定、中国金利が下落から安定に転じ、QE祭りが盛り上がらない代わりに人民元の下落も一段落する、という展開に見える。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。