Nikkei Value
 米金利上昇に伴い、日本株の中で鳴かず飛ばずだった割安株のアウトパフォームが急激に進んでいる。「金利が上がると株価評価の際に企業の将来利益を現在価値に割り戻す割引率が上昇する。投資指標面で割高さが意識される結果、割高感が薄い銘柄に資金が向かいやすい」そうだ。「直近の成長株相場は世界的な量的金融緩和と低金利政策が底流で支えてきたが、金利上昇を背景に成長株の上昇の勢いは世界で鈍ってきている」と、10年越しの割安株相場を見込む声もある。確かに冒頭の日経の図のように、春以降の米金利のチャートとTOPIXのバリュー・グロース比率を並べるとそれっぽく連動している

本場では連動が限定的

SPX Value Growth vs TNX
 一方、米国ではS&P 500のバリュー・グロース比率(上図)と米10年金利(下図)の間に目立った相関は見られない。つまり米金利(円金利ではない!)と割安株の優位さが連動するのは日本特有の現象である可能性が大きい。米国では直近こそバリューシフトと金利上昇が並行しているように見えるが、その幅は限定的であり、バリュエーションが高いFANGをはじめとするナスダック指数は米金利の上昇によく耐えている。

割安株と言えば

 TOPIXの中で割安株と言えばすぐに思いつくのは銀行(TPXBNK)である。このセクターの多くを占める地方銀行は一部で「PBR0.3倍倶楽部」などとも言われ、マイナス金利政策由来の不景気さがニュース紙面を賑わせて来た。冒頭の図の7月の割安株の上げは明らかに7/20にリークされた日本銀行の長期金利誘導目標の柔軟化に伴う銀行株の上げから来ている。同時に円金利の上昇は太平洋を越えて米金利をも上昇させた。米金利と共に円金利が上昇すれば銀行収益が回復するという希望が持てるわけだ。

金利上昇を渇望する邦銀株

TPXBNK
 ではこの米金利と銀行株の上昇は持続性があるのか。「日本は19年にかけて消費増税や統一地方選挙など財政拡大の理由は多い。緩和縮小に動く米欧はすでに財政重視に動いており、中国も財政拡大へとカジを切った。その先にあるのは金利上昇だ。相場の主役交代の時期は着実に近づいているようにみえる」と日経記事は言う。しかし2018年に入ってから金利上昇局面にあるのは誰の目にも明らかだったはずなのに邦銀株は一貫して金利上昇トレードを入れた参加者を裏切って来たので、飛びつくには勇気がいる。某小型成長株投信の苦境が噂になっており、ある程度のバリューシフトという雰囲気にはなっている。日経平均のチャートは明らかに上に抜けており、ここからの指数の強引の上げは低位株の乱暴な買い戻しによって実現されるという絵が描けなくもない。またTOPIX銀行株指数も半年をかけてリバース・ヘッドアンドショルダーを形作っている。今度こそというところか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。