SSEC
 貿易戦争や当局の経済引締めのせいで主要国中ワーストパフォーマーとなっている上海株指数。本ブログは一貫して「上海株は香港株と比べて割高」として避けてきたが、これだけ一人負けが続けば割高さも解消されただろうか。
 

香港H株との対比

AH premium
 HANG SENG CHINA AH PREMIUM INDEXという同じ企業群の上海上場A株と香港上場H株との差を指数化したものをFTで確認できる。上海株は歴史的に、香港で上場しているH株と比べて割高に推移してきた。2015年のチャイナショック前は同じ企業群同士で上海株の方が40%ものプレミアムで取引されていた。背景としては投資家が(中国=本土、香港=海外と)分断されていること、上海株の空売りが非常に困難であることなどが挙げられた。チャイナショック後にこの割高さは徐々に修正してきたが、2017年後半〜2018年前半のリスクオン局面には再び30%のプレミアムまで割高化しまっているため、本ブログでも「上海株のパフォーマンスはいまいちだったがこちらは未だに割高であり、同じ企業群が上場している香港株指数を選好」としていた。その後上海株の下落トレンドが続くにつれてAHプレミアムは30%から15%まで縮小したが、直近で香港H株も米株に連れられて急落したせいで一気に再び25%まで戻ってしまっている。上海株が下落しても、それを材料に香港H株も下落するので上海株の割高さがなかなか解消されないという、アキレスの亀の様相を呈している
SSEC HSCEI
  上海総合指数 : 香港H株指数の比率。長い目で見ると、ノイズもあるものの2016年から一貫して割安なH株の方がアウトパフォームしている。

PERで見ると

Shanghai PER
  PERで上海株の絶対的な割高さの方を見ると、2018年初は20倍に届こうとしていたのが、下落に伴って7月には14倍まで調整している。データが7月で止まってしまっているが、足元はさらに少し割安化になっていると思われる。

今後

 なお年初の記事では「金融緩和のターンでは米国、日本が相次いで金融緩和でバブルを作った後、2014年に中国も真似て金融緩和を敢行したところ、一瞬株がバブルになったもののすぐに人民元の資金流出という中国特有のトラブルに見舞われた。引締めでは中国は日本の前に躍り出た。また不動産あたりで中国特有のトラブルに見舞われるとパターンとして綺麗になるが、果たして」としていたが、思ったより綺麗に的中している。
SSEC SPX
 足元で上海株は皮肉にも米株とそれに連動するH株の急落によって、H株対比でも米株対比でも相対的に堅調に見えている。貿易戦争で上海株だけが下落する場面ならばトランプ大統領も安心して色々と仕掛けられる。しかし10月になってようやく米株を人質に取るのに成功したため、上海株の孤独な戦いは終わったと見てよいではないか。

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この記事は投資行動を推奨するものではありません。