CNY
 中国は米国財務省による為替操縦国の指名を避けることができたようだ。もっともドイツ、日本、スイス、韓国、インドと同時にウォッチリストには入ったままである。この非難は元より的外れなものだ。トランプ大統領は「輸出ブーストのために通貨を安く誘導している」と中国を非難しているが、中国当局は明らかに逆の試みを続けている。もし中国当局が人民元相場への介入を完全に放棄した場合人民元が更に大きく下落していたであろうことは明らかだ。また米国の関税も貿易相手の通貨を減価させる。

 

中国の外貨準備と米国債保有が減り始める


China Forex Reserve

 中国の外貨準備は基本的に安定していたが、7, 8, 9月と加速的に減り始めている。この外貨準備が資産として持っていた米国債の保有残高も、5月末1.183兆ドル、6月末1.179兆ドル、7月末1.171兆ドル、8月末1.165兆ドルと減り始めている。

FDIは安定

China FDI
 FDIの減少も外貨準備が減少に転じる原因となり得るが、こちらは昨年比ほぼ同じペースでの流入となっている。である以上、これは人民元の対米ドルレートが再び7.0に近くにつれて中国当局が外貨準備を取り崩して為替介入を始めた可能性が高いことを意味する。「中国が貿易戦争の一環として米国債の売却を始めた」との観測も流れたがこれは的外れであり、ただの通貨防衛を過大評価しすぎである。

 関税とデレバレッジ引締めの内憂外患の中にあって、中国当局が人民元を対ドルで高く維持したい動機は不明である。メンツか、ムニューシンに対して為替操縦国でないことを示したかったのか。金融緩和の効き目の大半も為替安誘導によって初めて実現する。金融緩和を進めながらこのまま介入で外貨準備をドブに捨てながら人民元を中途半端な位置に固定させようとするのは明らかに歪みを蓄積するだけである。

関連記事

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES
US doesn't call China 'currency manipulator' but keeps it on a watch list with Germany, Japan, others - CNBC
中国の米国債保有残高、半年ぶり低水準 貿易戦争で対抗して売却か - SankeiBiz

米国の政策金利が中国に肉薄する
中国CPIと豚肉、豚コレラ
中国当局が人民元相場の「反循環要素」を再導入
中国当局が弾薬を節約しながら介入を始める
人民元相場からようやく焦りが
中国の6月外貨準備が増加
中国の金融政策が緩和的に傾く可能性
Bloombergが人民元の制御された墜落を報じる
人民元の制御された墜落

この記事は投資行動を推奨するものではありません。