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 世界でワーストパフォーマーの一つになっている上海株。下落が止まらない背景の一つに創業家や大株主、経営陣が融資を受けるために巨額の株式を担保に出しているというのがある。その額は6000億ドル(67兆円)と言われ、これは実に中国株全体の時価総額の11%に及ぶ。


追証祭り

 該当企業の株式の下落幅があまりにも大きければ担保割れになり、債権者は資金の回収を迫ってくる。創業家や投資家が株式を売り出すにせよ、株式担保を入手した金融機関が特に企業経営に興味を示さず処分するにせよ、下落が更なる下落を呼びやすい構造になっているわけだ。これは2015年のチャイナショックで問題になった個人投資家による信用取引とは厳密には違うが、株価が下がると追証売りが出るという構図は同じだ。株式の過半数が担保に出された企業リストも判明しているため、空売りが決まりやすい構図となっている。

 上海株を米株や米国との関係から予想すると外れやすい。民間企業オーナーが株式担保融資に手を出したのも元はと言えば、デレバレッジとやらで民間企業の正常な資金調達ルートが阻害されてきたからだ。景気後退も上海株の暴落も、ほぼ貿易戦争と無関係に中国当局のデレバレッジ騒ぎによるオウンゴールである。

地方政府QE

 この構図に対して打ち出された施策としては、一つは債権者である金融機関に対し、監督機関などを通して強制売却をしないよう政治的圧力をかけること、もう一つは地方政府などが出資してファンドを組成して問題の株式を買い取るというものである。強制売却を政治的圧力で凍結してもそのまま株価が下がるなら債権者が損するだけなので、一つ目の効果は限定的だろう。二つ目は各地方政府によるQEとも言えるものだ。真っ先に支援に動いた「広東省深圳市や北京市海淀区」には上場企業が多く、彼らからの税収のおかげで財力もある。どうせ地方政府が買い支えるなら空売りして担保割れを狙っても意味がなくなるので、この追証騒ぎは鎮火に向かうだろう。19日には中国人民銀行総裁、銀行保険監督管理委員会(銀保監会)、証券監督管理委員会(証監会)の各トップが揃って「株式のバリュエーションは低い」と発言しており、こちらも株式指数の支えとなるだろう。

縁起が良い国家隊

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 2015年のチャイナショックの時(赤)株式市場ごと買い支えた「国家隊」と呼ばれた金融機関群は結局2017年年末から2018年年初の株高(緑)で利食っている今回の地方政府系ファンドによる買い支えも同じ結果になる可能性が高い。株式市場を支えるのは良いが、当局が民間投資家や民間企業にデレバレッジを強制し、その結果暴落した民間企業の株式を政府が安く買い取って国有化していくのは長期的に経済成長のためにならないと思う。9月には呉小平という正体不明の論客が「民間セクターは既に公共経済発展での支援という役割を終えたので、徐々に市場から退出すべきである」という民間企業退場論をぶち上げて国内外から批判と失笑を呼んだが、今まさにそれが起きているかもしれない。買い支えへの万雷の喝采と共に民間経済は死につつある。

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