
中国各地でマンションを販売中にどんどん値下げする不動産業者に対して、一期目に既に購入した住民が一瞬にして数百万円レベルの大損が確定してしまったので抗議デモをしたり、モデルルームを打ち壊す事件が多発しているのがニュースになっている。住宅ローンもおりにくい中、一族郎党でお金を集めたり何年も節約生活を送って貯蓄に励んでようやく住宅を買えたと思ったら天井ジャンピングキャッチだった、では人生終了を宣言されるようなものだから、デモしたくなる気持ちはよく理解できる。
値下げは当局の引締めのせい
激しい値引き販売は明らかに当局が不動産デベロッパーのファンディングを引締めており、デベロッパーがあまり在庫を長く抱え込めないからだ。住宅ローンの引締めや販売規制により需要を人為的に押さえ込みながら不動産業者のファンディングを締め上げれば人為的に住宅価格をコントロールすることができると当局は踏んでいるようだが、単にボラティリティとトラップを作り出しているだけのようにも見える。需要も供給も薄くなれば当然市場はチョッピーになる。全体で見ると住宅価格は全く下がっていない

ところが、では中国全土で不動産価格が下落に転じたかというと、残念ながらそんなことはない。10/20に中国国家統計局が発表した70都市新築住宅価格を見ると、むしろ前年比で上昇を続けている。ティアに分けると上海、北京などの一線都市(Tier 1)は前月比0.1%下落。二線都市は前月比1.1%上昇。三線都市は前月比0.9%上昇と、前月比でも二、三線都市(地方、中小都市)を中心に上昇が続いている。インフラ整備により便利になった中小都市が、チャイナショック前は住宅在庫だらけの田舎(ゴーストタウン)だったのが至るところで見直しミニバブルになったり、またミニバブルが崩壊したりを繰り返しているのが実態ではなかろうか。
ミニバブル崩壊は局地的

FT・日経の記事は「同様の抗議運動が厦門や貴陽のほか、いくつかの小都市でも報告された」としているが、例えば厦門などは2015〜17年の住宅バブルで有名であった。観光くらいしか産業がなく、海が見えるくらいしか取り柄がないのに2015年以降、チャイナショック後の金融緩和から投機資金が流入したのか、中古住宅(黄色)の平均平米単価は2017年までにほぼ倍に暴騰し、北京・深圳・上海に次ぐ全国4位に躍り出たという。「そんな馬鹿な」と言っても、「低所得者にはわからないだろうが富裕層は海が見える住宅に希少価値を見出しているのだ」と煽られていたかもしれない。あまりにもバブルがひどいので2017年3月に厦門市政府により全国初の住宅購買制限令が打ち出され、その後の中国各地の不動産凍結策のロールモデルとなった。なお厦門の下の5位、6位には自由貿易圏バブル最中の海南島の都市が二つ続き、その下にようやく我々にとって馴染み深い広州、杭州が来る。厦門の平均平米単価は2年で2倍になった後に不動産凍結策で2割ほど調整しているので、個別物件レベルではジャンピングキャッチして秒速で損する人がいるのは当然だろう。それだけをクローズアップすると全体像を見誤ることになりそうだ。
所得を左右するファンダメンタルズが不透明な中で、一時的にデレバレッジのせいで供給減バブルが来ても中国不動産の中期的なアップサイドは限られると考えているが、なかなかに一筋縄にはいかないようだ。
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この記事は投資行動を推奨するものではありません。