上海株がアンダーコントロールになったところで、そもそもなぜ株式担保融資などというゲテモノが流行ったかを総括してみたい。意外な話は出てこない。
チャイナショック後の株式指数の買い支えのために中国当局は、2015年7月に「上場会社の幹部や保有株式5%以上の大株主に対しての半年間の売却禁止制限」を命じた。その半年後の2016年1月8日には売却が解禁になるということで上海株が連日の急落に見舞われた。当局は下落を止めるためにサーキットブレーカーを導入したもののこちらは大コケに終わってしまった。サーキットブレーカーが発動すると売れなくなり流動性がなくなるので、指数が下がり始めると「サーキットブレーカーが発動するまでに売った人の勝ち」ということで売りが殺到した。埒が明かないので当局は1月7日に5%以上を保有する大株主に対して、3ヶ月に1%ずつしか売れないとする売却禁止令を発表した。5%を保有する大株主が株を売り抜けようとすると15ヶ月かかるわけだ。20%なら60ヶ月である。更に2017年5月にはこれを5%以下のIPO株主にも拡張し、大株主の手元流動性を徹底的にロックアップしてしまった。
大株主が株を売却しようにも「3ヶ月に1%」というローペースでしか売れないため、新規事業立上げなどで手元流動性が必要になった時には「売れない持ち株」を担保に融資を受けざるを得なかった。中国の事業家の特徴として、一つの事業に集中せずに次々と話題の事業に突っ込むというものがある。それには売れない持株は邪魔であった。悪質な場合だと、どうせ売れないなら融資を受けるだけ受けて、マージンコールがかかった時に対応せずに担保として金融機関に引き渡してしまうことによってエグジットを図る大株主もいたかもしれない。それでも売却規制によって2年間にわたって中国株は表面上の繁栄を演出した。
当局はそれで満足していたかもしれないが、貿易戦争によるリスクオフをきっかけに、72兆円まで膨れ上がった株式担保融資は結局2018年秋に爆発した。この爆発は完全に2016年以降の中国当局による市場への干渉の結果である。最初から売却を禁止しなければ今頃この株式担保爆弾はなかったはずだ。まれに責任感のあるオーナー経営者がいても、デレバレッジのせいでまともな融資を受けられないので、結局会社のために株式担保融資に手を出さざるを得なかった。全て当局の引締めと人為的な相場形成によるオウンゴールである。
今後、この爆発物は地方政府の資金で埋めることになるらしいが、引続き要警戒である。株式担保融資の出し手は証券会社が中心なので、この問題の進展を確かめるには証券セクターを観察すれば良いはずである。今は政治的に担保の回収を止められているが、その分担保割れで証券会社の資本が毀損しそうになったら証券セクターが売られるはずである。逆に証券セクターが堅調なら当分は問題ないだろう。
中証・証券会社指数 -Sina Finance
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大株主が株を売却しようにも「3ヶ月に1%」というローペースでしか売れないため、新規事業立上げなどで手元流動性が必要になった時には「売れない持ち株」を担保に融資を受けざるを得なかった。中国の事業家の特徴として、一つの事業に集中せずに次々と話題の事業に突っ込むというものがある。それには売れない持株は邪魔であった。悪質な場合だと、どうせ売れないなら融資を受けるだけ受けて、マージンコールがかかった時に対応せずに担保として金融機関に引き渡してしまうことによってエグジットを図る大株主もいたかもしれない。それでも売却規制によって2年間にわたって中国株は表面上の繁栄を演出した。
当局はそれで満足していたかもしれないが、貿易戦争によるリスクオフをきっかけに、72兆円まで膨れ上がった株式担保融資は結局2018年秋に爆発した。この爆発は完全に2016年以降の中国当局による市場への干渉の結果である。最初から売却を禁止しなければ今頃この株式担保爆弾はなかったはずだ。まれに責任感のあるオーナー経営者がいても、デレバレッジのせいでまともな融資を受けられないので、結局会社のために株式担保融資に手を出さざるを得なかった。全て当局の引締めと人為的な相場形成によるオウンゴールである。
今後、この爆発物は地方政府の資金で埋めることになるらしいが、引続き要警戒である。株式担保融資の出し手は証券会社が中心なので、この問題の進展を確かめるには証券セクターを観察すれば良いはずである。今は政治的に担保の回収を止められているが、その分担保割れで証券会社の資本が毀損しそうになったら証券セクターが売られるはずである。逆に証券セクターが堅調なら当分は問題ないだろう。
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