
中国の10月外貨準備は取り崩しが加速している。人民元の対ドルレートが7に近づくにつれて、明らかに実弾での買い支え介入が増えているように見える。
この話題についての本ブログのコメントは先月の記事と変わらない。「関税とデレバレッジ引締めの内憂外患の中にあって、中国当局が人民元を対ドルで高く維持したい動機は不明である。メンツか、ムニューシンに対して為替操縦国でないことを示したかったのか。金融緩和の効き目の大半も為替安誘導によって初めて実現する。金融緩和を進めながらこのまま介入で外貨準備をドブに捨てながら人民元を中途半端な位置に固定させようとするのは明らかに歪みを蓄積するだけである。」

7.0という心理的な水準は明らかに当局の防衛目標となっている。7.0を割り込んだらグローバルでニュースになってしまいメンツが傷付くからだ。一部では「ペースを落とすための介入」との観測もあるが、それならば介入玉は必ず損するので単純に外準をドブに捨てているだけである。2015年のチャイナショックは2014年から15年にかけて蓄積された歪みの放出であったが、足元の7.0近辺では再び歪みが蓄積している。

当局はというと、いまだに見えない敵との戦いを演出するのに躍起になっている。先月末には人民銀行の副総裁が「元の空売りを狙う動きについては、われわれは何年か前に直接対決し、互いを知り尽くしている」「まだ互いの記憶に新しいことと思う」と警告を発しているが、人民元の最大の潜在的な売り手が人民であることも知らないようでは「知り尽くしている」とは到底言えない。肝心の海外勢の国際金融資本()は、中国の債券・株式が共にインデックス入りが控えていることから、嫌でも目を瞑ってお金を入れないといけない立場にある。

変動相場制の下で為替の3%、5%の値動きは誤差である。新興国は言うまでもなく、先進国同士のペアでも同じであり、ドルインデックスも大きく動いている。その中で一人、対ドルで7.0という水準にこだわって勝った負けたと言い続けている当局がいるのは非常に違和感がある。どこかで当局がこだわりを捨てる可能性については常に考慮に入れるべきである。
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